アキハバラキングダム2回戦。
余裕で勝つつもりでいた。ほんの少しだけ、油断していたのかもしれないけれど。
結果としては敗北、という屈辱的な二文字を刻まれ、重いため息を吐く。
マスターキング様に山野バンたちが適うはずないと踏んではいるけれど、やはり負けるということは悔しいことだ。握り拳に力を込める。

「やーい、負けてやんの」

けらけらと笑い声が背後から聞こえる。
耳に響く少女特有の高い声には聞き覚えがあり、間違っていなければそれは今一番会いたくない奴の声だった。

「…名前」
「賭け、わたしの勝ちね」

振り返ればやっぱりそこには名前の姿があって、唇を三日月の形にしつつ「ハーゲンダッツのドルチェ、モンブラン味」と数日前に約束した賭けの景品を歌うように口ずさむ。
ハッカー軍団に所属しているわけでもなく、サポートメンバーでもない名前が何故ここにいるのかと疑問が浮かんだが、おそらくマジョラムあたりが手引きしたのだろう。
じろり、とそちらに目をやれば不自然に逸らされたのだから間違いない。
社交性の高い名前は自然と受け入れられていて、実際今ヤマネコとしているやりとりもまたいつものが始まった、というような目で見られている。

「だから言ったじゃん、山野バンは期待の新星だよって」
「はっ、実際俺っちが戦ったのはそのお供だけどな」
「そのお供にさっくりやられちゃったのがヤマネコね」
「ぐっ…」

はいはい拗ねないのー、と手をひらひらさせながら笑う名前は、何を考えているかよくわからない。はっきり言って苦手な部類だ。
たまにふらりと現れてはLBXバトルを挑んで、その勝敗でアイスを奢ったり奢られたり。
今回のアキハバラキングダムの話もどこから聞きつけたのか、「私は参加できないからヤマネコがどこまで勝ち進めるかで賭けようじゃないか」と唐突に提案してきた。
結果、ハーゲンダッツの、しかもドルチェシリーズという地味に高いものを買わされる羽目になったのだが。

「…いくら山野バンが強くたって、マスターキング様には勝てっこねぇ」
「じゃ、それも賭ける?私は山野バンが勝つと思う」
「キングを賭けの対象にするたぁいい度胸だなぁ?名前…サーティーワンのロッキーロードとキャラメルリボンな」
「ヤマネコってくどい味好きだよね…私ホッピングシャワーとツインベリーチーズケーキ」

お互いに顔を合わせ、ニヤリと笑う。げんこつをぶつけ合って、それが約束の合図だ。
なんだかんだ言いつつも名前との賭けが楽しみであるのは否定できない。

20111101


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