memo
昔、LBXバトルでどうしても勝てなくて悔しくて泣きそうになった時に、そんな私の横顔をしばらく見つめてから「ちょっと貸して」と機体をいじってくれて。
その機体でリベンジしたら、今までのメンテナンスは何だったんだろうというくらい、スムーズに動きまわって、100%…いや、200%の力が出せたと思う。
「やったぁー!勝ったよ!タケルちゃんありがとう!!」
「少し調節しただけだよ…サユキのバトルの癖は知ってたから」
「タケルちゃんすごい!とーってもすごい!!」
「そんなにすごくないって」
その時の彼はとても輝いていて、世界で一番かっこいい。間違いなくそう思えた。
その後はお姉さんのアスカちゃんのためにワンオフ機を作ってしまうし、まさに天才。そんな私の幼馴染、古城タケルは私の誇りであり、最愛の人であり、とにかく何よりも大切な人であった。
だから彼がLBXの名門校である神威大門に進学すると聞いたときはすんなり納得できたし、彼の技術力なら神威大門でも認めてもらえる程のものであると確信していた。
それでも、やはり今まで一緒に過ごしてきた幼馴染と離れてしまうのは寂しいものがあったし、何より私にも夢があった。
タケルちゃんの技術力を世界に示すために、タケルちゃんの作り上げたLBXの力をフルパワーに引き出して宣伝する。
アスカちゃんひとりだけではなく、私も続けば、よりタケルちゃんの力はすごいものだと広まるだろう。だから私は決めたのだ。
「わたしも、神威大門に行く」
「えっ…サユキが?」
「タケルちゃんのすごい技術力をもっともっと広めるために、タケルちゃんの整備したLBXで勝ちまくるの!」
彼は困惑した、すこし眉を寄せた笑みを浮かべた。そんな顔をしてほしかったわけではないのに。
「…サユキが本当にやりたいって言うのならいいけれど、他にやりたいことができたらそっちを優先してね」
タケルちゃんは本当に優しい子なのだ。
私はその優しさに甘えている。私が甘えていることを知りつつ、甘やかしてくれる。
きっとそんな関係はいつかグズグズに溶けてしまうから、一度離れなければならないのだろうけれど、まだ弱い私はそんなこと到底できるわけなかった。
タケルちゃん。
世界で一番大好きな、私の大切な人。彼のために、戦うこと。それが私の夢。やりたいこと。