また次の日。
 朝食を終えたフィリアの部屋に、またもやサイクスが現れた。この調子だと毎日来るのだろうか。今日はゼクシオンとぶすっとした表情のヴァニタスを連れている。彼は今日も淡々と語った。

「本日から、ヴァニタス様があなたの傍にいることになります」
「え……なぜ?」

 いくらヴェントゥスの弟であっても、フィリアにとっては敵国の襲撃者である。できれば一緒にいたくない。

「昨日、城の中で迷われたとか。ヴァニタス様は貴女の友人とでもお思いください」
「えっ」
「ばかを言うな。コイツの見張りだ」

 不満たっぷり顔のヴァニタスがサイクスをねめつける。フィリアも同じ機嫌の表情をサイクスに向けた。

「そのような役目なら、ゼクシオンにお願いしたいです」

 この中で一番一緒にいてストレスのない相手を指名するも、返答はつれないもの。

「申し訳ありません。僕はあくまで一時的の措置としているだけで、本業は家庭教師ではありませんから、夜はそちらの仕事をやらねばなりません」
「それなら、せめて女性を」
「あいにく、今は相応しい者がおりません。それにこれはゼアノート様の命令です」

 サイクスから有無を許さない調子でキッパリと言われてしまえば、フィリアはグヌヌと黙るしかない。それに、これ以上ゴネたら本当にこの部屋に閉じ込められてしまうかもしれない。

「…………よろしくお願いします」

 フィリアがチラリとヴァニタスを見やると、彼は整った顔をいかにもいじわるそうに歪め、ハンッと鼻で笑った。






2.5.5


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