謎の男

 プリンセスたちからの情報で、マレフィセントと戦った礼拝堂の先にある龍の間への道が再び開かれていることを知った。聞くに、何かの気配があるとのこと。危ないものがあったら大変だ。
 リクたちをアンセムから取り返す前に、ドナルドとグーフィー、ビーストと一緒に調査しようと軽い気持ちで入ってみると、黒いコートの男と出会った。
 フードを深くかぶっているので、顔は口元までしか見えない。分厚い筋肉質のガッチリとした男のシルエットの割に、まるで幽霊のようにふわっと現れた。

「誰だ──!?」
「ほう、君も特別なようだ」

 問いに答えず、レオンよりも低い声が呟いた。

「アンセムぅ──?」

 グーフィーが訊く。確かに身長とか、ムキムキなところとか、背格好は似ているかも。
 黒コートの男は振り向きざまに少し笑った。

「なつかしい響きだ──」

 会話が成り立っていないことに若干いら立ちを覚えるが、それよりも男の片手がバチバチと魔法で光りだしたことの方が気になった。あれをこちらに放たれたら──。

「君は彼に似ている」
「どういう意味だよ?!?」

 自分のどこも、あのアンセムになんか似てないぞ!
 慌ててキーブレードを防御姿勢で構えた。男の手の光が電撃となって襲いかかってきた。
 紫色を帯びた白い電撃はしばらく男と自分の間を繋ぎ、なんとか振りぬいて遠い壁へ吹っ飛ばした。ガラガラと城の一部が壊れ、崩れる。
 この男、なんのつもりか知らないが、やはり敵なのか?

「完全ではない、ということだよ」

 やはりこの男が何を言っているのか分からず、男の言葉を待つ。

「不完全なものよ。その能力を──確かめさせてもらいたい」

 襲ってくる。とっさにキーブレードを構えて迎え撃つ。

 男はこれまで出会った誰よりも強かった。どの動作も隙がなく、淡々とスパークボムを撃ってくるし、近づけばバリアを張ったり赤いビームのサーベルのような剣で斬りかかってきた。


 熱をもった剣が髪先を焦がすにおいを嗅ぎながら、全力でキーブレードを男の胸に叩きこんだ瞬間、男の動きが止まった。ハートレスのように消滅するのか? しかし、バシッと音をたてて大きなダメージ跡は消えてしまった。
 男はくつくつ笑っていた。

「──実におもしろい。今後が楽しみだ」
「何を言ってるんだ!」

 今後も関わってくるつもりなのか。ここでトドメを刺してやろうと斬りかかるも、目で追えない早さで男が消え、背後に現れる。

「今のおまえでは理解できまい。またいずれ、会える時が来るだろう」

 故郷で出会ったフードに言われた言葉を思い出す。気味が悪い。

「おまえ、誰なんだ?!」
「私は──」

 幽霊のように男の姿が透けて、消えてしまう。

「ただの抜け殻さ」

 床には爆発の跡、天井は初撃で崩れたまま。仲間たちは激しい戦闘でボロボロだ。
 それなのに、男の姿は夢幻みたいに消えてしまった。





R4.9.8


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