未だぼんやりとしたロクサスを連れて任務から帰ってきたアクセルが、自室へ向かう途中で会ったのは、フィリアとその尻を追いかけるデミックスだった。

「なぁ〜フィリアちゃん、一回だけ、一回だけおねがい!」
「ヤダって言ってるでしょ」

 身長の割りに大きな胸を揺らしながら、フィリアがイライラとデミックスから逃げ回っている。アクセルに気づくと、アッと頬を染め、手を振りながら近づいてきた。

「アクセル―!」

 アクセルから見て、フィリアは幼馴染というひいき目を除いても、顔立ちは整っているし、ナイスバディである。しかし、彼女には大きな欠点、いや問題があった。
 花のような可憐な笑顔。桜色した唇が「ねぇねぇ」と言ったところで、アクセルは目の前でぼけーっと突っ立っていたロクサスの耳を高速で塞いだ。

「エッチしよ!」
「あぶねえええっ!」

 ロクサスがぽかんとアクセルを見上げてくるなか、アクセルは心の冷や汗を拭った。「どうしたの?」と首をかしげるフィリアをキッと睨みつける。

「おまえ、未成年の前でなんつー発言してくるんだよ!」
「えぇ〜? 過保護〜。アクセルがロクサスくらいのとき、エッチな本持ってたじゃん!」
「はぁぁあ? も、もってねぇし! てか、もっと慎みを持てよ!」

 アクセルお母さんみたい〜と言い返してくるフィリアの後ろで、デミックスが大変ショックを受けたあと、お願い! と縋りついた。

「フィリアちゃん、俺ともエッチしてー!」
「もぉ〜〜。いやだって言ってるでしょ。いいかげん、しつこいってば」
「頼むよぉ。アクセルと3Pでもいい――ぶへぇ!」

 キィン、と魔力が動く音がしたとき、アクセルはヤベッと思ったが、忠告する前に、ドゴン! という派手な音と共にデミックスは吹っ飛ばされていった。
 男ひとりぶっとばしたあと、ふしゅーっと吐かれる息。アクセルが炎、サイクスが月であるなら、フィリアは星の力を操る。重力の乗った重すぎるパンチは、まともにくらうとアクセルもあれくらい吹っ飛ばされるだろう。
 その細腕から繰り出されたとは思えない威力を発揮したフィリアは、ピクピクと倒れているデミックスへとても可愛らしくキャルンと笑んだ。

「私、自分より弱い人に抱かれるほど暇じゃないの」

 目の前でおきた惨劇に、ロクサスが目をまんまるくして、未だ耳を塞いでいるアクセルを見上げてくる。アクセルは顔を青くしながら、ロクサスを彼の自室に避難させた。


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