ヴェントゥスと付き合いだしてから何回目のデートだろう。久しぶりに誘われた場所はディズニータウンだった。
 ランブルレーシングで巧みにマシンを操り一位になったヴェンの姿はもう惚れ惚れするほどにかっこよかったし、フルーツスキャッターでは点数を稼ぎあうよりも風船をポコポコぶつけ合って遊んだほうが楽しかった。ヴェンが作ってくれたアイスはステージよりも高くなってしまって、二人では食べきれないほどだった。
 夜にパレードがあるよと住人に教えてもらい、カラフルな電飾を身にまとった様々なキャラクターたちが歌い踊りながら練り歩くパレードをついさっきまで眺めていた。最後のダンサーが手を振りながら退場し、終了のアナウンスを合図にみんなぞろぞろ帰り始める。

「はぁー……すっごく楽しかった! 誘ってくれてありがとう、ヴェン」
「喜んでもらえてよかった」

 微笑みあいながら繋いだ手にぎゅっと力をこめると、ヴェンからも同じくらいの力を返された。ずいぶんと久々にヴェンを一日独り占めできたから、とっても満足――と思ったところで、思い出してしまった。数週間くらい前から、ヴェンは朝早く外の世界へ出かけては、夜遅くに疲れきって帰ってくる生活を繰り返していたのだ。いまはもう闇の勢力の心配はないはずなのに。

「ねぇ、ヴェン。最近ずっと忙しそうにしていた理由、まだ教えてくれないの?」
「んー、まだ内緒」

 今日のデートは、隠し事をされて私が拗ねてしまったからご機嫌取りに誘ってくれたのかなと思っていたが、ヴェンはまだ隠し事をし続けるらしい。ふくれっ面をした私の頬をからかうようにヴェンが指先で押してきた。

「きっとそのうち分かるよ。それより今日はもう遅いし、明日帰ろうか」

 この世界と旅立ちの地は遠い。あまりに遅くなった場合はその世界の宿に泊まってよいとマスターから許可を得ている。疲れがたまったまま異空の回廊を居眠り運転するよりはちゃんと休息をとるべきとの考えらしい。
 ランブルレーシング会場側にある背の高いホテルへ入ると、外装と同じくポップな装飾がされたロビーが出迎えてくれた。ふわふわ甘い香りがする。

「俺がチェックインしてくるから、座って待ってて」
「ありがとう」

 キャンディみたいなかわいい色のカウンターへ向かったヴェンは鍵を受け取ったあと、困り顔で戻ってきた。

「あいてる部屋がひとつしかないんだって。一緒でいい?」

 いっしょに旅してきたこともあり、同じ部屋に泊まるのは初めてのことじゃない。深く考えず、すぐに頷いた。


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