「夢は、所詮夢だ」

 若きゼアノートがいるのはフィリアの見ている夢の世界。淡い桃色の雲をはじめ、柔らかい色合いで描かれたのもばかりの子供っぽさを残した世界だった。彼女を悪夢から守っていたスピリットたちはゼアノートにことごとく追い払われていたため、いま夢の奥の更に奥で熟睡しているフィリアはひとりぼっち。あどけない寝顔を浮かべたまま、すやすや雲の上で眠ってた。

「だが、夢は現実にも密接に関係している」

 夢だから、強く願えばある程度のわがままは叶う。ゼアノートの願い通り、ほわんと薄紫の煙を上げて、このふわふわとした雰囲気の世界には全く似合わない、真っ黒で豪華なベッドが現れた。ゼアノートはパジャマ姿のフィリアをひょいと抱き上げて、ベッドへ寝かせるついでにその上へのしかかる。
 髪をシーツに広げ、規則正しく胸を上下させるフィリアを眺めながら、ゼアノートは己の手袋の指先を噛み、するする脱いだ。露わになった指の背で無遠慮に頬を撫で上げると、夢だが肌触りや体温をしっかり感じるとることができ、心臓の鼓動まできちんと伝わってくる様は、まるで現実と変わらない。

「何度の夢で気づくか、実験だ」


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