その後、フィリアたちは彼をホテルへ連れ帰り、マスターエラクゥスへあったことすべてを話した。
こっそりヴァンパイアと会っていたことについてはきつく叱られたものの、思うままキーブレードを呼び出せるようになったので、フィリアはヴァンパイアハンターとして正式にマスターエラクゥスへ弟子入りすることが決まった。
ホテルに連れ帰ったヴェントゥスは翌朝、朝日のなか目覚めた。
「ヴェントゥス。気分はどう?」
「フィリア……?」
彼はしばらくぼうっとしていたが、やがて昨晩のことを思い出したようだ。
「俺、ヴァンパイアじゃなくなったのか……君の力のせい?」
「そう」
フィリアは頷きながら、昨晩のマスターエラクゥスとの会話を思い出す。
「ヴァンパイアハンターのキーブレードには、それぞれ固有能力が宿る」
たとえば、アクアは対象に守護の加護を与える。相手を守る魔法であり、望めば繋がりをも辿ることができる。テラには己の戦闘力を大幅に増幅させる能力がある。
エラクゥスは言った。
「フィリアの能力は、闇を抜き出す力であろう」
「つまり、上級のヴァンパイアを人間に戻すことができるということですか?」
「ただし、抜き出した闇を滅すことができれば。宿す闇によっては返り討ちに合う危険の方が高いだろう」
「そんな力があるなんて……」
それきり三人が深刻な表情で黙ったので、フィリアは何か悪いことをしてしまったのかという焦りにかられた。
起き上がらぬまま、ヴェントゥスが手を伸ばし、指先でフィリアの首に触れてきた。
「君の血、飲みそびれちゃった」
「まだ飲みたいって思う?」
「まさか……こんな清々しい気分、何年振りだろう」
血の気が通ったヴェントゥスの姿は朝日に金髪が輝いてまるで天使のようだ。
フィリアはヴェントゥスの手を掴み、そっとベッドへ置いた。
「ヴェントゥス。まだ体はつらい? もう少ししたら、安全なところへ行くための迎えがくるから……」
ヴェントゥスの手が輝く。鳥の翼のような形をした黒いキーブレードが現れた。ヴェントゥスが「俺も使えるんだ」と薄くほほ笑む。
「フィリアたちは、これからマスターゼアノートと決着をつけるんだろ」
「うん。そうなると思う」
「俺も行くよ。君と一緒に」
「けど……」
ヴァニタスやマスターゼアノートはヴェントゥスの仲間では。戦うことになっても平気なのか心配するフィリアへ、ヴェントゥスは分かっていると頷いた。
「フィリアは俺の恩人だから。君のことは、俺が守るよ」
ということで、ヴェントゥスが仲間になった。
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