時は少しばかり遡って、フィリアたちのいる街の西はずれ。
 無人を確認した小屋の上に、アクセルたちは立っていた。

「俺が適当に撹乱してる間に、おまえはあの教会に忍び込め。いいか、奴らが全員出てからだぞ」
「……ああ」
「フィリアを見つけたら、さっさと花嫁にして闇の回廊で逃げ出せよ。花嫁にしてからだからな? 普通の人間には、闇の回廊は耐えられねぇ」
「……ああ」

 同じ返事を繰り返すロクサスに、アクセルは「本当に聞いてんのか」とぼやきたくなる。ロクサスはずっと教会の方向を睨んでいて、今にも駆け出しそうな様子だった。

「もし奴らとかち合っても、出来る限り戦うな。また禁断症状にでもなって、フィリアを殺しちまったら目も当てられねー」
「わかってる」

 苛立った声の返事で、アクセルはやっと少し安心できた。追跡していたことはヴァンパイアハンターたちに気づかれているだろうし、相手は三人。誘導がうまくいったとしても、アクセルたちが不利なのは変わらない。何より、ヴァンパイアだと知ったフィリアがロクサスにどんな反応を返すのか、それにロクサスがどんな影響を受けるのかは予想すらできなかった。

「アクセル、陽が沈む」

 光と闇を放って、ロクサスの両手に剣が現れた。アクセルも合わせて己の武器を召喚する。

「んじゃ、始めるか」

 アクセルはチャクラムを投げて、足元の小屋の屋根へ火をつける。乾いた空気も手伝って、火はあっけなく燃え広がり始めた。

「教会の中にいる人間は敵だよな?」
「ああ。邪魔だったら倒していい」

 それだけを確認すると、ロクサスが風のように教会の方へ走り出す。その後姿が町並みに消えたのを見届けて、アクセルも闇の回廊の中へ入った。



* To be continue... *






2012.2.2




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