前回のバレンタインはたくさんの人に配ったけれど、そのせいで準備が大変だった。なので、今年のバレンタインチョコはひとつだけ。おっきなハートの形に固めたチョコをせっせとラッピングし、会心の出来栄えに満足していた。
「よし、完成! さっそく――」
「ぐっ……!」
チョコを掲げたとき、大きな物音と苦しげな声がした。振り向くと、ロクサスが苦しそうに膝をついている。
「わわっ、ロクサス! だいじょうぶ!?」
「フィリア……」
辛そうに呼吸を繰り返すロクサス。汗びっしょりでとても具合が悪そうだ。
「俺は、ノーバディだから……心がないと、いつか闇に溶けて消えちゃうんだ」
「えっ? じゃあロクサス、いま消えちゃいそうなの?」
「たぶん」
コク、と頷かれいよいよ焦った。
「やだ、消えないでロクサス。どうしたらキミを助けられるの?」
「心があれば――」
「心? でも、キミにはキミの心あるんじゃあ」
「ソレ」
ロクサスがこちらの手元を指した。さきほど作ったばかりのチョコがある。
「フィリアの心が籠もったチョコを食べられれば、きっと」
「ほ、本当?」
「ちょっと待った」
ニコニコと割り込んできたのは、いつの間に来たのだろう。ヴェンだった。その笑顔は爽やかだが威圧を感じる。
「これは俺のだからダメ」
「フィリアは俺にくれるって言ったよ」
急に元気になって立ち上がったロクサスとヴェンがにらみ合う。同じ姿の同じ顔が同じ機嫌の表情で向き合っていて、まるで鏡合わせみたい。
「ロクサスはチョコよりアイスの方が好きだろ。ほら、ダブルクランチあげるよ。俺をイメージしたアイスなんだ」
「アイスならシーソルトアイスに決まってるよ。それに俺だってチョコくらい食べる」
「ならアイテムのバレンタインチョコをあげる。さっきヴァニタスごとプライズポットをたくさん殴ってきたところだから」
「俺が欲しいのはそれじゃない。だいたい、どうしてヴェンがもらえるって確信しているんだ。フィリアが誰に渡すのかなんてわからないだろ?」
二人の視線の間にバチバチ火花が散っている。いやな予感。
「じゃあ、聞いてみる? フィリアが誰にあげるつもりだったのか」
「ああ、そうだな」
グリン! といっせいにこちらを見るふたり。なんだか怖くて、あたふたしてしまう。
「フィリア。そのチョコ誰にあげるの?」
「えっと、これは」
「俺にくれるって約束したよな?」
「う、うん。消えちゃうって言ったから」
「ロクサス、すっかり元気じゃないか」
「だめ。フィリアの心がこもったチョコを食べないと消えちゃう。ノーバディだから」
「ズルイぞ。それなら俺は心が眠りについちゃうかも」
「ええっ!?」
ずずいっと声をそろえて叫ぶ二人。
「さあ、どっちに渡すんだ!?」
私の答えは……
→「もう約束もしたし、このチョコはロクサスにあげたいの」
→「このチョコ、ヴェンに渡すつもりで作ったの」
→「もう! ふたりとも、ケンカしないで!」(最後に読むのがおすすめ)
\やるやるやる〜/
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