SecretHeart Board



 それを見つけたのは、アクアだった。

「極秘のコマンドボード?」
「なんだそれ?」
「シークレットボードのことか?」
「違うわ。ここにそう書いてあるでしょ」

 アクアはテラの言葉を否定しながら色あせた巻物をこちらへ向けた。くたびれた表紙に【取扱注意】と【極秘】という文字が毛筆で書かれている。

「書庫の整理をしていた見つけたの。片付けてしまいたいけれど、マスターは出かけているし……」
「今日は遅くなるって言ってたよね」
「しかたないから、明日にしましょうか」
「明日は、私も手伝うよ」

 アクアとフィリアの会話を横で聞きながら、ヴェントゥスは興味深々に、テラはいぶかしげにそれを観察した。

「取扱注意のコマンドボードか。どんなものか気になるな」
「なぁ、マスターが帰ってくる前に、ちょっとだけ覗いてみようよ」
「あ――待てっ、ヴェン!」

 テラが止めるも間に合わず、ヴェントゥスは軽い気持ちでコマンドボードを開いてしまった。途端、引きずり込まれる感覚と、何かがすり抜けてゆく錯覚が襲ってくる。
 程なくして響いてくる、厳かなゲーム音楽。四人が目を開くと、そこは薄暗がりの中に輝くステンドグラスの世界だった。





 四色の丸いステンドグラスにはそれぞれ若い女性が描かれていて、神秘的な雰囲気を宿している。

「これが……極秘のコマンドボード?」

 ヴェントゥスはしばらくその光景に見入っていたが、フィリアの呟きで我に返った。いつの間にか、目の前に“ニューゲーム”という文字が浮かんでいる。

「雰囲気は独特だが、普通のコマンドボードのようだな」

 テラが注意深く言う。メニューをいじっていたヴェントゥスは「あっ」と叫んだ。

「これ“やめる”が選べないぞ!」
「ゲームをクリアするまでは“やめる”を選択できませんって書いてあるわ……いつものコマンドボートとはルールがところどころ違うみたい」

 アクアが難しい表情で、細かく書き連ねられたヘルプの1文を読み上げた。
 そんなルール、他のコマンドボードには存在しない。薄気味の悪さに、一瞬、重い沈黙があった。しかし、すぐにフィリアが笑う。

「ねぇ、せっかくだし、とりあえず遊んでみようよ」
「そうだな」

 テラが1番に賛成する。

「危険じゃないかしら?」
「だが、クリアすれば脱出できるかもしれないだろ」
「そうだな。始めよう」

 不安を押し隠し、ヴェントゥスたちはニューゲームを選択した。




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