Day 100+?
部屋の中でヒマヒマ言ってたら、ダスクがくれた絵本のクライマックス。
悪者に攫われていたお姫様が、助けてくれた王子の頬にキスをしている挿絵のページで手が止まった。彼女なりの感謝の証だとは理解できるが、これが命をかけて救出した相手に支払う対価? 命に見合う価値があるもの? これってされて嬉しいもの?
首をかしげていると、ちょうどサイクスが部屋に入ってきたので訊いてみた。
「ねぇ、サイクス。サイクスもこれをされたら嬉しくなる?」
挿絵を見せると、サイクスは目を丸くした後、すぐに眉間に皺を寄せて細かい文字を読むような目つきをした。
「ならん」
ツンと顔を逸らされる。わざとらしい大きなため息を添えて。ノリ悪い。
別にいいもん。他の人に聞くから!
その後、ゼムナスからは無言で頭を撫でまくられただけだったので、アクセルに訊ねることにしたのだが、運悪く入れ違いでもう任務へ出発してしまったようだ。そのままロクサスとトワイライトタウンへ向かう運びとなる。
なので、到着するなりさっそくロクサスに聞いてみた。
「ねえ、ロクサス」
「ん?」
「ロクサスは、キスされたら嬉しい?」
すると、ロクサスは何度か目を瞬かせて
「キスってなんだ?」
「…………」
そこから?
説明を考える前に、ちょうどハートレスが現れだしたので会話終了。ロクサスが戦い始めたので物陰に隠れる。
「もう終わりかな、わっ!」
しばらくして、ハートレスの最後の一匹がロクサスに斬られたので油断した。背後から現れた一匹に突然抱えられたのだ。しかし、声に気づいたロクサスがすぐに助けてくれたのでホッとする。
「ありがとう、ロクサス」
「うん」
ケガの有無を確認しているのか、こちらの服や膝を眺めてくるロクサス。いつもより顔の距離が近い。脳裏に浮かぶ絵本の挿絵。純粋な興味。思考より先に体が動いた。
触れたのは一瞬。ゆっくり数歩離れるとロクサスがポカンとこちらを見てくる。
「いまの、何?」
「キス」
「さっき言っていたやつか。どんな意味があるんだ?」
「助けてくれたお礼になるみたい。イヤだった?」
特に嬉しくもなさそうなので訊ねてみると、ロクサスはちょっと視線を彷徨わせた。
「イヤじゃない」
「そっか」
特別嬉しくないならお礼の価値にはならないのかも。あの本はなんだったのか疑問が残ったが、その時は、まぁそんなものなのかと結論づけた。
\やるやるやる〜/
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