周りの子がキーブレード使いになったから。私にもキーブレードを使えたから。そんな理由でなったキーブレード使い。参加したユニオン活動。誰かの役に立ち、感謝された時の満ち足りた気持ちを味わった時、私はこの使命が大好きになった。 
 けれど、命がけの仕事というのは想像以上に易しいものではなかった。剣を振っても力が足りず、魔法を撃っても威力が上がらない――私はとても弱かった。


 この使命は好き。続けたい。なので必死に努力した。
 ひとりでできないことならば、誰かと助け合えばいい。しかし、私は相手に負担をかけさせるばかりで、足をひっぱり、みんなを危険にさらしかねない。引っ込んでろと言われる。そんなことが何度もあって、みんな私の側から離れて行った。


 頼るより、頼られるように強くならなくちゃ。がむしゃらに修行をしてみたら、たいして強くなれなかった上に身だしなみに気が回らなくなって、泥だらけの姿が不潔だと周囲の人からのけ者にされるようになった。


 嫌われるのはつらい。清潔にしなくちゃ、好まれる外見を心掛けなくちゃいけないと、次は見た目を整えることに力を入れた。流行りに敏感な女子が持っていた雑誌を参考にコーディネートしてみると、たちまち男子が助けてくれるようになった。ほとんどがやらしい目で見てくる人ばかりだけれど、命の危険は前より減った。中には「守ってやるから俺と付き合え」と言ってくる乱暴者がいて、断ったらひどい噂を流されたりした。
 一方、女子からは「彼氏を色仕掛けで奪った」「見た目を磨く前に、自分で倒せるようになればいいのに」「男に媚びを売る尻軽」「任務へ男漁りに来ている」とますます毛嫌いされてしまった。


 ひょんなことから私のような低レベルでも危険度の高い任務へ向かわなければならなかったある日、すごい人を見つけた。羽のついた黒い帽子をかぶった、黒い髪の男の子。周囲からブレインと呼ばれていた子は、すぐに誰も気づかなかった敵の弱点を見抜き、圧倒的な剣術で倒してしまった。才能のある、賢くて強いキーブレード使い。私もあんな風になりたい。私はブレインに憧れた。


 それからは、こっそりブレインを追いかけるようになった。彼がよく立ち寄る場所で眺めたり、自分のチリシィから彼とおそろいの帽子をかぶったチリシィを通して予定を聞いてもらったこともある。どうしたら彼のようになれるのだろう。その一心だった。そんなにしつこく追いかけていたのに、話しかける勇気だけはなかった。


 ブレインは、すぐに私がストーカーしていたことには気づいていたと思う。数回目の合同任務の時に初めてブレインから声をかけてきて、私の力量に見合った、けれどみじめにならない程度の任務を指示してくれた。その時の、みんなそれぞれ自分の役割を果たし、まるで歯車がきちんとかみ合ったように任務が大成功したときのあの高揚はとても久しぶりだった。
 任務完了の後、震えつつも勇気を出してお礼を言った。彼はなんてことないといった返事をしたけれど、今まで私に対し、一方的に守ってくれるか、邪魔者あつかいする人にしか出会ってこなかった。だから簡単なことでも役割を与えられ、完遂できたことへの感動を必死にブレインに伝えた。気まぐれなのか、彼は「じゃあこれからも組む?」と誘ってくれた。もちろん二つ返事で快諾。その日はうれしくてなかなか寝つけなかった。




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