ぽかぽかとした、暖かい日。
 私とヴェントゥスは、山頂に広がる原っぱの上に寝転んでいた。

「暖かいね〜」

「うん。気持ちいいな」

 ヴェントゥスと、まるで猫みたいに背を丸めながら、ごろごろと日差しを堪能する。視界の端には黄色い野花。今、この世界は春真っ盛りだ。
 心地よくて思わず大きなあくびをすると、ヴェントゥスも同じようにあくびをした。

「私、眠くなってきちゃった……」

「うん……俺も……」

 まどろみながらの会話は次第にとぎれ……いつしか、私たちは眠ってしまった。





 目が覚めたのは、それから少し経った後。空を飛ぶ、小鳥の声で目が覚めた。

「う、ん……」

 目を閉じたまま、大きく伸びをして起き上がる。とろんとする目を擦りながら辺りを見ると、目の前に私が倒れていた。

「えっ」

 目を擦って、もう一度見る。顔に髪形、服装までも、やはりソレは私の体で、とても気持ちよさそうに眠っていた。
 私がそこにいるならば、今見ている"私"は一体――?

「もしかして私、死んじゃったの!?」

 思わず叫ぶと、いつもより声が低い。

「……まさか」

 ハッとして髪に触れると跳ねた短髪、少し足首が覗くズボン。

「う……フィリア、どうしたの……?」

 私の叫び声に反応して、私の体が目を覚ました。眠たそうな瞳が、私を見て丸くなる。

「あれ――俺?」

「違う、違うよっ」

 こんなこと、ありえない。
 半泣きの声で、私は叫んだ。

「ヴェン。私たち、入れ替わっちゃったみたい!」










 私は、私となったヴェントゥスと向き合って座っていた。

「それじゃあ、いくよ?」

「うん。せーのっ……」

 ガツンと鈍い音をたて、私とヴェントゥスの額がぶつかる。あまりの痛さに、すぐにお互い額を抱えて悶絶した。

「いってぇー!」

「いたっ、いたい……!」

 心が入れ替わってしまったことを認めてから、私たちは元に戻る方法を探していた。原因はさっぱり不明。思いつくまま念じてみたり、こんな方法を行ったりしてみたが――目の前にいる人物は、変わらず自分のままだった。
 額を撫でながら、痛みとショックで泣きたくなる。あぁ、どうしてこんなことに。

「私たち、ずっとこのまま元に戻れなかったらどうしよう……」

「そんなこと考えるなよ。絶対、元に戻れるって!」

 私であるヴェントゥスが、私に向かって拳を握る。

「テラとアクア、それにマスターにも相談してみよう。きっと、元に戻る方法が見つかるよ」

 いくら家族同然のように過ごしてきたといっても、私たちは異性同士。風呂や着替え――お手洗いの前までには、元の体に戻りたい。

「そうだね。早くみんなに相談しよう」

「ああ」

 早速私たちは助けを求め、城に向かって歩き出した。




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