ハイネたちとの待ち合わせに向かう途中の路地で、またあの白くてウネウネして、気持ち悪いモンスターに囲まれた。こいつらに遭遇すると現れる、鍵の形をした武器を使って倒きったと思ったら、次は黒いコートのヤツが現れた。フードをかぶっているので、子どもの身長ってことくらいしか分からない。この前、ストラグルバトルで出会ったアクセルの仲間だろうとあたりをつけた。
「また……」
いい加減、イライラしていた。こいつらと出会ってから、せっかくの夏休みだというのに、ハイネたちと満足に遊べていない。
「いったい、おまえたちは何なんだよ!」
すると、相手がフードをとったので身構えた。一瞬、見惚れる。現れたのは悲しそうな表情(かお)をした女の子だった。
女の子は、黒い手袋をつけた右手を差し出してくる。
「キミの仲間だよ。迎えに来たの」
「えっ……俺の友達はハイネたちだけだ。キミとは初対面だろう」
「本当に、覚えていないの。私と、私たちのこと」
じっと見つめられて、たじろいだ。女の子はかわいいし、瞳は今にも泣き出しそうな悲壮さに満ちていた。
「悪いけど――」
「……そう」
驚いた。女の子がいきなり細剣を抜いて襲ってきたのを、反射的に鍵の剣で防いでいた。
女の子が、刃の向こうで眉根を寄せた。
「おとなしく倒れて」
「無茶言わないでくれ!」
女の子とチャンバラなんてしたことがない。でも、相手は本気だ。
「事情を聞かせてくれよ!」
「時間がないの。おねがいだから……」
倒されたら、多分トワイライトタウンから攫われる。手加減なんてできなかった。戦っているうちに女の子が膝をつき、地面に崩れ落ちた。ケホッと咳き込む姿にやりすぎたと慌てるが、近寄れない。
「さすがロクサス。そんな状態でも強いんだね」
分からないから、返す言葉がない。あちらから襲ってきたとはいえ、女の子を傷つけたことはバツが悪かった。
女の子が微かに笑う。
「もしかすると、これが正しいのかもしれない。でも、キミはそれでいいの」
「どういう意味だ?」
「ロクサスは、ロクサスなのに」
俺が俺であることなんて当たり前だ。
じれったくなり、思い切って女の子に近寄った。艶のある髪が揺れ、いい香りがする。どこかで嗅いだことがある。
「俺、キミと、どこかで……」
女の子がハッと口を開こうとした瞬間、視界がザッと砂嵐のような画面に変わる。気がついたら、何もない路地にひとり立っているだけで、女の子の姿も、俺たちが戦ったあともどこにもなかった。
H29.2.20
\やるやるやる〜/
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