優しく、フィリアの頬をなでて少し上を向かせた。
フィリアが、察してくれて、目を閉じる。
俺は、ゆっくりフィリアの唇に触れるだけのキスをした。
フィリアの唇、すごく柔らかい……。
もっとその感触を味わいたくて、何回も唇を合わせた。
……本当はそれ以上のこともしたかったけど、いきなりいろいろやると嫌われちゃうよな……。
うん、今はこれでガマンしなきゃ。
キスした後、フィリアを少し強めに抱きしめた。
そしたら、フィリアも俺の背に手をまわして応えてくれた。
ああ、もう、好きだ……大好きだ!
「……フィリア……大好きだ!」
「……うん、私も!ヴェン、大好き……っ!」
両思いだなんて思ってなかったから、今……すごく幸せだ。
それに、フィリアが俺に告白するために、あんな熱心に勝負を挑んできてくれてくれたのかと思うと、かなり嬉しい。
……あれ?
「……なあフィリア、なんでコマンドボードに勝ってから告白しようと思ってたんだ?」
「ん……『告白するならヴェンにコマンドボードに勝って、心を成長させてからのほうがいいだろう』って、マスターが……」
「……へぇ…………マスターが、ね……」
適当なこと言ってるけど、フィリアを溺愛してるあのマスターが、純粋な思いで助言をしてるはずがない。
俺に負ける気がないのを知ってて、わざとそう言っているに決まってた。
……でも次の日、マスターの鬚が全部なくなっていたのは、また別の話だ。
2010.3.27
原作沿い目次 / トップページ