次のゲームの結果も、もちろん俺の勝ちで終わった。
「もーーっ!……勝てないなぁ……」
「はい。今日はもうおしまいだよ」
「……うぅー……」
納得いかないって顔でフィリアがコマンドボードを睨んだけど、別に何も仕掛けとかないからな。
悔しがるフィリアを引きずって、コマンドボードの空間から俺の部屋に戻ってきた。
「あーあー、何で勝てないんだろう。……でも、明日は絶対勝つんだから!」
「明日も?どうしてそんなに俺に勝ちたいんだ?」
聞いてみたら、なぜかフィリアが顔を真っ赤にした。
「そっ、それは内緒…………」
「えっ、何で?」
「なんでも!……私が勝てるまで、秘密!」
なんだろう?気になるな……。でも、これからも負ける気はないし。
「……さっきのゲーム、俺が勝ったから命令。その秘密、今言ってよ」
「あっ、……ずるい!」
「勝者の特権」
ほら、と促せば、フィリアが顔をまた真っ赤にして、うー、とかあー、とか唸った。
フィリアがあんなに顔を真っ赤にするほどの内緒ってなんだろう。
……そんなに変なことなのか?
……なんだかこっちも緊張してくるな……。
しばらくして、唸り続けたフィリアが、ついに決心したように俺を見た。
「…………じゃあ、ヴェン、言うから……後ろ向いて」
「……?……こう?」
俺はフィリアの言うとおり、フィリアに背を向けて壁の方を見た。
何する気なんだ?って思ってたら、いい匂いがふわっと濃くなって、背中に温かくて柔らかいものがくっついた。
白くて細い腕が、俺の胸の前で交差する。
……フィリアに抱きつかれてた。
「フィリア!?」
「今、私の顔見ないで」
俺はびっくりして振り返ろうとしたけど、ぎゅって抱きしめてくる力で、それを止められた。
ぴったりくっついてるから、見るなって言ったフィリアがどんな顔をしてるのかもわからない。
フィリアの心臓の音が伝わってくる。
俺の心臓も同じくらい大きい音をたてていた。
ちょっと待って、今一体何が起こってるんだ!?
俺が慌ててたら、フィリアが小さい声で言った。
「…………勝ってから言おうって思っていたんだけど……私、その……ヴェンのことが、……好きなの……」
「えっ……!?」
…………今なんて?
フィリアが俺を好きって聞こえたけど……。
…………まさかな。
じゃあ、これは夢か?
いや、……俺まだ寝てないよな?
それに、背中の柔らかさは本物だし……。
え……本当に、フィリアが俺を……?
俺がそんなこと考えてたら、パッとフィリアの手と温もりが背中から離れていった。
「っ……そっ、それだけ!…………おやすみなさいっ!」
「あ!待って!フィリア!」
「っ……!」
俺は慌てて振り返って、部屋から出ようとしたフィリアの手を掴んで引き止めた。
恥ずかしいのか、フィリアは掴んでないほうの手をぶんぶん振り回してる。
「ごご、ごめんね!いきなり変なこと言って……!私……あの、えっと、そのっ……!」
フィリアは少し泣きそうな声だった。
俺がすぐ答えてあげなかったから、ふられるって思ったのかもしれない。
「俺もフィリアが好きだ」
「……え……?」
フィリアが手を止めた。
「ごめん、ちょっと、都合のいい夢かと思ってたから……。俺も、フィリアが好きだよ」
「……本当、に……?嘘じゃない?」
「本当。嘘じゃない。……だから、こっち向いて、フィリア」
そう言うと、フィリアがためらいながらも振り向いてくれた。
真っ赤な顔で、目が潤んでて……すごくかわいい。
「フィリア……」
「あっ……、」
そっと、フィリアの髪に触れてみた。
さらさらって指を流れて、とても綺麗だ。
「ヴェン、くすぐったいよ……」
撫でていたら、フィリアが俺を見上げて微笑んだ。
うわっ、ちょっと、その顔は反則……!
すごく抱きしめたいし、キスしたいな……
ずーーーーっとガマンしてきたんだし……
今なら…………いいよな?
原作沿い目次 / トップページ