ヴェントゥス――ヴェンは、ひとことでいうならまさしくレオンたちが求めていたキーブレードの勇者≠セった。

「いま世界は闇に沈もうとしている。闇の世界に巣食うもの、ハートレスたちがあふれだして世界から光を奪おうとしているんだ」

 レオンの説明にヴェンはしっかり頷いた。エアリスが悲しげに告げる。

「私たちの故郷もマレフィセントに奪われたの」
「マレフィセント?」
「知ってるの?」

 ユフィの質問にヴェンはもう一度頷いた。

「一度戦って、勝ったことがある。そうか、あいつが――
「勝ったことがあるの!? すごいや、さすがキーブレードの勇者だね!」
「フィリア、覚えてない? 俺たちオーロラ姫の心を開放するためにマレフィセントと戦っただろ?」

 ユフィの「勇者」という単語に苦笑するヴェンに話を振られて、自分の影に隠れていたフィリアがビクッとした。

「知らない……私、戦ったことなんてないもの」

 目も合わせず、拒絶を前面に押し出したフィリアの態度にヴェンが表情を曇らせる。さっきからずっとこんな調子だ。

「ヴェン、お願い。マレフィセントを倒して、世界を守って」

 エアリスの頼みにヴェンは「分かった」と快諾し、ドナルドとグーフィーも「僕たちも一緒に行くよ」と名乗りを上げた。しかし、ヴェンはそれに首を振る。

「俺、ひとりで大丈夫。任せてよ。ミッキーも必ず見つけてくるから」
「でも、王様には『鍵と一緒に行動するように』って言われているんだ」

 ドナルドがプンスカ食い下がった。グーフィーがこちらを見て笑う。

「ドナルド、鍵はもうひとつあるよぉ」

 そこでやっと注目されたが、補欠みたいな扱いで居心地が悪かった。ドナルドは気に入らなさそうに顔をしかめているし。

「ソラはこれからどうするんだ?」
「俺は、リクとカイリを捜すよ」
「そうか……フィリアは?」

 ヴェンは気の毒なくらい、そっとフィリアに話しかける。フィリアはこちらの袖にしがみついたまま「ソラと一緒に行きたい」と答えた。また一段とヴェンの表情が苦くなる。

「フィリアもハートレスに狙われているんだろ? できれば俺と一緒に来るか、安全なところで待っててほしいんだけど」

 心配で心配で仕方がないと言外に伝えるヴェン。これには助け舟を出してみよう。

「フィリア、俺もその方がいいと思う」
「いや、ソラと離ればなれになりたくない」

 いよいよ、くすんくすん泣き出すフィリアにそれ以上は言えなかった。誰もがヴェンを優先するなか自分を尊重してくれるのが嬉しかったのもあったかといえばある。
 一方でヴェンはもう何度目か、またガックリ落ち込んでいた。けれど彼はめげなかった。

「じゃあ、ソラ。俺と一緒に行こう。キミもキーブレード使いだ。友だちを捜しながらマレフィセントを倒せば問題ないだろ?」
「それなら、やっぱり僕たちも一緒に行くぞ!」
「鍵と一緒に行動しなくちゃいけないもんね〜」

 ドナルドが怒鳴り、グーフィーが笑い、また話がややこしくなってゆく。
 結局、モメにモメた結果、みんなで一緒に旅に出ることになった。




原作沿い目次 / トップページ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -