Day 200+?



 今日もロクサスとトワイライトタウンへお出かけ。あちこちフラフラして、現れるハートレスをロクサスが退治して、ある程度経ったら時計台へ行く楽しい時間。
 ロクサスもシオンも戦っている姿は勇ましくてかっこいい。道端に置かれたドラム缶の裏から眺めていると、ロクサスに吹っ飛ばされた一匹がちょうど目の前に転がってきた。まだ消えない。起きた。目が合う。――あ、まずい。
 こちらに爪を向けたハートレス。振り下ろされる前に頭を抱えて目をぎゅっと瞑った。痛みの前にキンと澄んだ音が鳴ったので目を開くと、ロクサスがキーブレードを投げたらしく、ハートレスは消滅していた。

「ごめん」

 守ってくれたのに謝るので首を横に振った。ロクサスは毎度ちゃんと守ってくれるのに、サイクスからの「守れ」の圧が強くって、こちらが申し訳ないほどだ。
 さて、そろそろ時計台に行く時間かな? 切り上げようと言われると思いロクサスを見ると、彼からじっと見つめられていたことに気がついた。こちらのケガの有無の確認ではなくて、何か訴えるような視線である。

「どうかしたの?」
「…………いや、なんでもない」

 無表情だけど、やや目線を下げて、少しガッカリしたような雰囲気なロクサス。どうしたのだろう。首を傾げつつ、駄菓子屋の方へ歩き出す。





Day 300+?


 めっきり外に出られなくなったから、貴重な一日。
 相変わらず、どこからともなく湧き出てきては襲ってくるハートレスたち。すっかり強くなったロクサスに蹴散らされているのに懲りずにのこのこやってくる。
 すっかり戦いなれたロクサスの惚れ惚れするような剣捌きを鑑賞しつつ、すっかり見慣れたトワイライトタウンの街並みを見やる。あーあ。シオンがひょっこり帰ってくればいいのに。
 ため息を吐いたとき、目ざとくこちらに気づいたハートレスが襲って来たけれど、ロクサスが放った魔法で爆散した。旬滅完了だ。
 ひゅるんと回してキーブレードを消したロクサスが歩いてくる。

「ロクサス、いつもありがとね」
「あのさ……フィリア」
「なに?」

 ロクサスの目を見るとき、顔を上げるようになった。出会った頃は同じ目線の高さだったのに、すっかりロクサスの背が伸びてしまったからだ。

「もうアレはしてくれないの?」

 手も大きくなったし、声音も低くなった。話すたび動く喉仏が色っぽい。

「アレって?」
「えっと、だから……」

 らしくなく、もごもご口ごもるロクサス。はて、すっかり強くなった彼にしてあげられることなんてあったっけ?

「ずっと前にしてくれただろ」

 赤らめた頬。期待をしている潤んだ瞳。

「俺、今なら、すごく嬉しいと思うんだけど」
「――あ」

 そこで思い出し、頬がぼっと熱くなった。互いに無知だった頃に散々やらかした恥ずかしいことのひとつ。

「あれは、なんていうか、その」
「もう、嫌か?」

 以前とは逆にロクサスから問われて、更に照れくさくなる。

「い、嫌じゃないけど、あれって」
「嫌じゃないなら、ダメか?」

 一歩ずいっと近寄られて、慌てて周囲を見回す。闇どころか人の気配もない静かな路地。
 ロクサスからキラキラとした期待を感じる。惚れた弱み。おねだりされたら断れない。それに彼からそういうこと求められるのは正直、嬉しい――が恥ずかしい!

「うーん……」
「ごめん。無理なら、いいよ」

 少ししょんぼりしてしまったロクサス。ただでさえ最近悲しい顔ばかりしているのに。
 ぐっと体に力をこめる。ロクサスのために、いま、私ができること。

「フィリア?」

 しょぼ……と歩き始めたロクサスの不意をついて、彼の腕をひっぱる。体幹がしっかりしすぎていて全然よろめかなかったけど、身長差は背伸びでカバー。やや下めの頬に触れることに成功した。
 至近距離で見つめ合う瞳に胸の中がムズムズする。あの絵本のお姫様の気持ちが今なら分かる。本当は頬だけじゃなくて、もっと、もっと――。

「立っているままじゃ、うまく届かないから」

 頬をリンゴのように赤くしたロクサスから離れながら、数歩先へ進み、振り向いて己の唇を指した。

「次は、ロクサスからしてね」

 言ってしまった!
 ロクサスが無防備な表情で目を丸くするのを見届けてから、背をむけて、駄菓子屋へ急ぐのだった。





R6.3.3




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