ウワサを聞いた。すごく可愛いけれど、すごく弱い女の子がいる。打撃は弱いし、魔法はしょぼすぎ、なんであんなのがキーブレード使いになったんだか。近くにいられるだけで迷惑だから、一生イージーから出てくるな……。最近、勢いのあるルーキーが、フられた女子の悪口を言いふらしているようだった。
 彼を囲う女の子たちも「弱いフリして男に守ってもらう尻軽」だとか「友達の彼氏もあの子に惚れたせいで別れることになっていた」だの悪口に同調していた。キーブレード使いとして仲間の悪口を言いふらすなんて恥ずかしくないのかね。読書している最中に近くへやってきてギャアギャアわめくものだから、すっかり気分が害された。任務にでも行くか。
 気分転換を求めて適当な任務に行ったら、そのウワサの子と会ってしまった。確かに可愛い顔をしているが、なんでそんな露出の高い服装をしているのか。それじゃあ、男を誘っているなんてウワサがたつのにも一定の納得をしてしまう。

 それから、視界の端に彼女が入ってくるようになった。今までもいたけれど気づいていなかったのか、それともただの偶然なのか? と思っていたら、彼女の方からこちらへ近づいてきているようだった。何か用があるのなら言ってくればいいのに。まぁ特に害はないし、こちらから何かする必要もないだろう。普段、受ける任務のランクも違うし。


 しばらく気づかないフリをして過ごしていたが、また一緒の任務になった。彼女はウワサ通りキーブレード使いとしては弱かった。魔法を撃つ時に怖いのか目を閉じていたり、敵を殴る時に弱点を探さず固いところを何度も攻撃していたりするせいだろう。とにかく目の前のことに必死すぎて、相手を観察しないところが原因のひとつと見た。破壊力がないなら、それを補う別の力を手に入れないとこの子はいつか死ぬだろう。
 その任務では、想定外な強敵が紛れ込んでいて連携が必要だった。他に適任がいなかったため仕方なく指示をだした。みんな従ってくれたおかげで被害ゼロで解決できた。
 なんとかなってホッとしていると、初めて彼女が話しかけてきた。頬を染めて、震える声で。

 「私にも指示してくれてありがとう。いつも役立たずって言われていたから、自分も役にたてて嬉しかった」

 なんだ、とてもいい子じゃないか。
 昨今、ルクスやノルマのことばかりで、人への優しさが忘れられている人ばかりのなか、その笑顔に癒された。
 
「ブレインのおかげ」
「大した事はしていないよ。助けてもらったのはこっちの方だし」
「私、ブレインと一緒に任務できてよかった」

 彼女が自分を追いかけていること。実力より上の任務に挑戦していることには薄々気づいている。どうして追いかけてきているのか理由は不明だけど、無茶をされ続けて死なれでもしたら目覚めが悪い程度には、この女の子に好感をもった。

「じゃあこれからも組む?」
「えっ……?」

 少しの間だけでも近くで見守ってやりたいなんて思ってしまい、つい深く考えずに誘ってしまった。彼女は少しためらっていたけど、最後は嬉しそうにうなずいた。




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