突然だが、ソラが増えた。
服の暴走? フォームチェンジしようとしていたソラが、ピカっと光ったらドッカンって音がして、気がついたらソラが増えていた。
赤いブレイブ、青いウィズダム、黄色いマスター、白いファイナル、そして初めての旅の時の服と同じリミットと、真っ黒のアンチ。フォーム別にソラが増えた。
普通のソラがいないけれど、これだけ戦隊みたいにソラが増えたら光の世界も6倍の早さで救えるのでは!? と思ったのも束の間。
「よーし、いくぞぉ! でてこい、ハートレスー!」
って、二本のキーブレードを振り回しながらいずこへと突っ走ってゆくブレイブに
「俺、最近、働きすぎたよなぁ。ちょっと休みたいよぉ」
って、昼寝を始めるウィズダムに
「フィリア。どんなハートレスがきても大丈夫! 俺が守ってあげるよ!」
って、見た目も中身もキラキラしているマスターに
「なんか、アイス食べたくなってきた。フィリアも一緒にシーソルトアイス食べない?」
っておこずかいを確認しはじめるファイナルに
「リク、どこに行っちゃったんだろう」
って、迷子みたいな顔をして凹み始めるリミット。
……あと、無言だけど、今にも暴れだしそうなアンチとみんなそれぞれソラっぽくマイペースに動き始める。
よりによって、ドナルドもグーフィーもいない。どうしたらいいのだろう。
「えっと。ソラ……」
「なに?」
返事は5人分(アンチはこっち見上げてくる)。大好きなソラがたくさんいて嬉しいけれど、全員がどっと押し寄せてきたので思わず後ずさりしてしまう。
「フィリア、早くハートレス倒しに行こう!」
「フィリア、俺と昼寝しようよ」
「フィリアは俺が守る!」
「フィリア、アイス買いに行こうよ」
「フィリア、早くリクを探しに行こう」
アンチ以外が一斉にしゃべるから処理しきれない。あわあわしている内にソラたちが焦れて、手やら髪のひと房やら掴んだり、腕を絡めてきたりしてオモチャを取り合う子供のようにやいのやいのとモメ始めた。
「あ〜〜もう、邪魔するなってば!」
「フィリアは俺と過ごすんだってば!」
「ハートレスくらい、ひとりで倒せばいいだろ」
「なんだとぉ!」
「リク、どこに行っちゃったんだよぉ」
ごちゃごちゃしてきて、どれが誰の発言だか分からなくなってきた。数多のソラからあちこちぐいぐい引っ張られたり、アンチがコアラのように抱きついてくるのが可愛かったり、こちらの状態もしっちゃかめっちゃか。
「もう、順番! 順番にするから!」
たまらず叫んだのと、ドッカンって音はほぼ同時。気がつけば、いつものソラひとりだけになっていて、自分の腹に抱きついていた。
あ、フォームチェンジの制限時間……。
はた、と正気を取り戻したソラが真っ赤な顔で「あれ!?」なんて驚いている。
「俺、フォームチェンジしたはずなのに、なんでフィリアにくっついているんだ?」
「よかった。ソラ。戻ったんだね」
「お、おう?」
混乱しているソラに詳細を説明するべきか悩みつつも、とりあえずホッと胸をなでおろす。いつものソラは、照れと混乱が混じった苦笑いをしていて、困ったように頭をかいていた。
大好きなソラが6人もいた、夢のような時間……。
「大変だったけど、もうちょっとだけ、あのままでいたかったかも」
その感想は、ソラには聞こえないように呟いた。
R4.9.7
\やるやるやる〜/
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