ディスティニーアイランド。
 誰もが寝静まった真夜中のこと。
 ベッドで眠っていたリクは突然腹に重みを感じウッと目覚めた。寝ぼけ眼を凝らせば誰かが腹の上に座っている。

「リク、起きた?」
「──フィリアか?」

 声で正体を知ったリクはキーブレードを呼び出す前に警戒を解いた。可愛い恋人であるフィリアはいつものように無邪気に微笑んでいたが、彼女の首から下を見てリクはギョッと目を剥く。

「どうしたんだ、その服……」

 蝙蝠みたいな羽根、胸元を強調したクロスホルターに、パンツが見えそうなほど短いフレアスカート。どこもかしこも際どい姿にリクがポカンとするのをよそに、早速気づいてもらえたとフィリアは喜ぶ。

「じゃーん、サキュバスだよ。似合ってる?」
「あ、ああ……」
「嬉しい」

 フィリアはうっとり微笑んで、上半身起こしかけのリクの頬へキスしてくる。リクはしばらくされるがままキスされていたが、性欲と共に頭も冴えてきたので一度フィリアを引きはがした。

「ハロウィンか」
「そう。トリックオアトリートって言っても、どうせ今お菓子ないでしょ? だから、これからリクにイタズラしまぁす」
「なんだよ、それ」
「ハロウィンルール! お菓子がない人は逆らっちゃダメ」

 リク、普段お菓子なんて買わないでしょ。と言いながら、フィリアは持ってきていたポーチから長い紐やら目隠しやらを取り出した。

「リク、抵抗しちゃダメだからね」

 目隠しを手に迫ってくるフィリアへ答えず、リクは腕をちょっと伸ばしてベッドサイド側の棚の引き出しを漁りだした。そんなに中身は入っていないので、目当てのものはすぐに見つかる。

「ほら。これでいいか?」
「飴? なんで持っているの?」
「昨日、カイリが配ってた」
「そういえば、私もひとつもらったっけ。新発売のパオプ味……」

 あからさまにフィリアのテンションが下がってゆく。ぶーっと拗ねてしまって唇を尖らせた。

「なーんだ。せっかくリクを攻めようと思ったのに──きゃっ!」

 リクはフィリアの手を掴み、彼女がケガしないよう気を付けながら体勢をひっくり返した。押し倒されたフィリアはあっという間に手首を縛られたことに気づき、びっくり顔でリクを見上げる。

「フィリアにこういう趣味があるなんてな」
「だって、縛らないとリクはすぐ、ひゃっ」

 リクがむきだしの太ももをゆっくりと撫で上げると、フィリアの足がビクッと震えた。

「そのポーチの中はこれだけか?」
「そうだけど……」

 リクは組み敷いたフィリアへ改めて笑む。

「トリックオアトリート。お菓子を持っていないなら、いたずらだな」
「ちょっ、ちょっと待って。ソレ、私が使おうと思ってたのに」
「だめだ。ハロウィンルールなんだろ」
「ずるい。リクは仮装してないじゃない!」

 フィリアの抗議に耳を貸さず、リクは慣れた手つきで目隠しをする。

 翌朝、やけにスッキリした顔のリクがヘトヘトな様子のフィリアと共にコスプレ衣装を洗濯竿に干している姿があった。
 大いに盛り上がった昨晩について、フィリアは顔をしょげさせ、リクは笑む。

「私、リクに素敵な淫夢を見せてあげるって決めゼリフまで考えてたのに……」
「俺はスピリットだから、悪夢は食らうぞ」
「ドリームイーター扱いしないでよ」





3.10.22




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