アグラバーで踊り子の衣装で観光していたら、なんと珍しいことか、ヴァニタスと出会ってしまった。仮面をつけていなかった彼はこちらを見るなり「はぁ?」と表情を歪める。
「なんだ、その恰好」
「なんだって……この世界の服だけど」
「かわいいでしょ?」と訊ねたのにヴァニタスは答えず。代わりに着ていた黒コートを脱いで無理やりこちらに着せてくる。
「え、なに? 暑いからいいよ」
コートを脱ごうとするも、押さえつけられる。
「いいから着ろ。周りのやつらからどんな目で見られてるか分からないのか?」
周りのやつら? 意味が分からずヴァニタスを見つめていると、彼の表情はどんどん暗くなっていって、ついにシュルッと足元からアンヴァースが現れた。思わずひぇっと声が漏れる。
「ここでアンヴァースを出さないで!」
ヴァニタスが舌打ちをして片手を掴んでくる。ぎょっとするも、振りほどく前に歩き始めた。
「え、ちょっと、どこ行くの?」
「黙ってついてこい」
そのままヴァニタスに連れられて、人気のない道を通りながらアグラバー観光を楽しんだ。
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