今日は猫の日。猫といえばチリシィ。そして、チリシィはスピリットだという。

「と、いうわけで、イェンシッド様にお願いして、もらってきたよ。スピリット用のお菓子」

 コンペイトウにクッキー、アイスとチョコをチリシィの前にどっさり並べると、嬉しそうにぴょーんと跳ねた。

「僕にくれるの?」
「うん、全部めしあがれ!」
「よかったな、チリシィ」

 ヴェンからクッキーを与えられて、チリシィがもくもく食べる。頬を膨らませて、ほっぺを赤くして本当においしそうに食べてくれてとても嬉しい。そしてかわいい。

「チリシィはどんな性格に変わるのかな」
「どういうこと?」

 お菓子でスピリットの性格が変わることを説明すると、ヴェンは面白そうと、チリシィにお菓子をぽいぽい与え始めた。
 クッキーを与えたら【おせっかい】に、アイスを与えると【あまえんぼう】へ。コンペイトウを与えたら【ツッコミ】に、どんどん性格が変わっていった。
 残るはレジストチョコのみだ。どんな性格になるのかしら。わくわくして与えようとしたところで、ヴェンが待って、と止めてきた。

「ネコにチョコってあげていいんだっけ?」
「全スピリット用だし、ネコキャットも無事だったし、大丈夫だと思うよ」
「そうか。なら安心だな」

 最後は私からチョコを与えようとして、ふっと手の内から消えてしまう。あれ、と周囲を探すと、どこから現れたのか。アンヴァースがチョコを奪っていた。奪い返す暇もなく、しゅしゅしゅ、と地面を潜って、窓の傍にいた人物へと手渡してしまう。
 アンヴァースが従うなど、ヴァニタスしかいない。ヴァニタスはフンとこっちを笑った後、チョコを口の中に放り込んでしまった。

「僕のチョコ……」
「もう。ヴァニタス!」
「コラ、チリシィのだぞ」

 ぷりぷりしながら詰め寄ると、チョコがそれほどおいしくなかったのか、ヴァニタスの表情が強張った。これって、いわゆるペット用のお菓子を食べちゃった人と同じ状況かしら?

「大丈夫? 人にはちょっとおいしくないかも。身体に悪いものは入っていないと思うのだけど……」
「プライズポットでも出して、口直ししろよ」
「そんな面倒なことをするか」

 構うな、とヴァニタスがヴェントゥスの手を振り払う。

「ヴァニタスもチョコ、食べたかったの?」
「バレンタインで、フィリアからチョコもらえなかったこと、気にしてるんだよ、きっと」
「えっ、そうなの?」

 ヴァニタスがヴェンをじろっと睨む。

「ずいぶん言うようになったな、兄弟……」
「じゃあ、今からアクアと一緒に作ろうか?」
「おい待て。なんであいつの名前が出てくるんだ」

 チョコじゃなくて攻撃魔法が飛んでくるだろ、と渋るヴァニタスを、ヴェントゥスが煽る。

「フィリアとアクアが作ってくれたチョコレートケーキ、すごくおいしかったなあ」
「材料残ってるし、同じの作ってあげるから、台所に行こう?」
「羨ましくなんか、おい、やめろ。押すな」
「はいはい。はいはい。早く行こうね」

 そうして、台所へ連行したヴァニタス用にチョコケーキを作ったものの、今度はチリシィがヴァニタスのチョコケーキを奪っていたのであった。







2020.02.22




原作沿い目次 / トップページ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -