漂っている岩石を避けてキーブレードが揺れる度、異空の回廊にフィリアの半泣きの悲鳴が響いていた。

「ヴェン、落ちるっ、落ちるよぉ!」
「うわっ、フィリア、もっと右に倒れて!」

 現在フィリアはヴェントゥスの腰にしがみ付き、必死にキーブレードの操作に同調している。
 テラとアクアのものとは違い、ヴェントゥスのキーブレードのライド型は明らかにひとり用。これに二人で乗るにはどうするか前の世界で試した結果、とりあえずフィリアが膝をつき、その前に立つヴェントゥスの腰にしがみついてバランスをとる形となった。
 とても難しいが、ヴェントゥスは運動神経が抜群にいいし自分だって悪い方ではないはずだ。乗ってみればなんとかなる。そう思っていたのだけれど……。

「フィリア、次は左に曲がるよ!」
「う、うんっ」

 引っくり返らないように慎重に体を左へ倒してゆく。顔面のすぐ横をゴツゴツとした岩肌が通り過ぎた。
 異空の回廊は地上から見た星の中。一面がキラキラしているようなもっと綺麗な場所かと思っていたが、実際は光っている星よりも光っていない岩が多く油断するとすぐに衝突しそうになってしまう。もう幾度もギリギリの回避が続き、そろそろ限界を感じていた。

「フィリア、次の世界だ」
「本当?」

 ヴェントゥスの背から顔を出して前を覗く。少し遠くにぼんやりと大きな光が見えた。あれが“世界”……。
 闇の中で光るその美しさに見とれていると、左側からとても大きな隕石がものすごい速度でこちらに近づいてきていることに気がついた。

「ヴェン、左からきてる!」
「えっ、うわ!?」
「あっわわっ」

 ヴェントゥスが慌ててキーブレードを飛翔させようとするが、急な動きにこちらが合わせることができず、なかなかキーブレードが上昇しない。隕石は容赦なく迫ってきている。やっとキーブレードが上に動き始めたときにはもう遅く、羽の部分に隕石がぶつかった。その衝撃に耐え切れず、ヴェントゥスごとキーブレードから跳ね上げられる。

「うわぁぁぁ……!」
「きゃぁぁぁ……!」

 とっさにヴェントゥスとお互いの手を掴み合って――そのまま、フィリアたちは次の世界へと落ちて行った。




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