「あった……!」
砂浜に体を半分埋めていた一枚を拾い上げサッと海水で洗ってみると、薄桃色の美しい色彩がハッキリとわかる。サラサ貝。
「カイリ、喜んでくれるかなぁ」
仲の良い赤髪の少女が喜ぶ顔を想像しながら、胸の高さまで大事に構えて走りだす。柔らかい砂浜はとても走りにくくて、急げば急ぐほど足をとられそうになるけれど、絶対無事に届けなくちゃ。
白いノースリーブに、紫色のショートパンツ。ブレスレットをつけた両腕をぶらぶらさせている。
「カイリ〜!」
橋の下を歩いていた短い赤髪の少女を見つけて大声で呼ぶ。カイリはゆっくりこちらを振り返ると、花のように可憐に笑った。
「あ、フィリア。そんなに急いでどうしたの?」
「見つけたの、カイリが探していた貝がら!」
そっと掌を開き、無事を確認してほっとする。カイリがポケットから別の一枚を取り出して、こちらのものと比べてみせた。
「うーん、ごめんね。大きさが合わないみたい」
「そっかぁ……」
カイリが必要だと探しているサラサ貝。傷や欠けてなどおらず、同じ大きさのものが五枚いるらしい。すでに三枚は揃っているものの、あと二枚が難しい。いつもなにかと自分を気にかけてくれる彼女の助けになりたいという気持ちに突き動かされ、絶対に残りを見つけようと改めて心に誓った。
「また探してくるよ」
「ありがとう。出発までに完成させられるといいんだけど――」
ふと、カイリが何かを見つけたらしくそちらを凝視する。つられて見れば、イカダの材料を探しに行っているはずの茶髪の少年が、組んだ腕を枕にし堂々と昼寝をしている姿があった。カイリはやれやれとため息をついたが、自分は彼を見るだけで嬉しくなる。
「ソラだ!」
「なかなか戻ってこないと思ったら、やっぱり。フィリア、いっしょに起こしに行こう」
「うんっ」
カイリと手を繋ぎますます嬉しくなる。「寝顔にいたずらしちゃおうよ」なんて提案するカイリに頷いて、無防備にぐうぐう寝てるソラへ忍び足で近寄った。
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