牢獄の空間から先は、マグマをたくわえる夜のはげ山。コウモリ翼と角を生やした悪魔のような魔人が待ち構えていた。トライデントの力で巨大化したアースラくらい魔人の身体は大きくて、ハートレスのシャドウのようになにもかもが真っ黒で、瞳だけが金色に輝いていた。
 魔人はこちらを認めると口から灼熱の炎を吐いてきた。自分たちよりも大きな炎のかたまりにぎょっと驚く。あんなもの当たってしまったら、ドナルドなんて一瞬でヤキトリになってしまう。
 宙を飛んで接近戦に持ちこむ。初めのうちは余裕ぶって腕を組んでいた魔人も、みんなで攻撃しているうちに、両腕を振り上げ吠えながら攻撃してきた。
 ここまでくぐってきた戦いに比べればこんなもの──コゲかけながらも仲間たちと協力して魔人を倒すと、魔人が生えていた火山の先に道があった。
 不気味な光で繋がった道。闇の深淵の中枢へと続く道。

「……フィリア。もうすぐだからな」





★ ★ ★





 闇の中にいるのが嘘みたい。突然光に目がくらんだと思ったら、青空の広がる海岸へたどり着いていた。穏やかな潮風と眩しい陽光。少し変わってしまっているが、ここへは来た事がある。

「ここはあの子たちと出会った世界──」
「本当にたくさんの世界が闇に飲みこまれているんだね──アクアはこの世界を知っているのかい?」

 あの時はもっと草木が生え、海の向こうに大きな島もあったはずだが、間違いない。ここはディスティニーアイランド。
 記憶が次々と蘇り、あどけない少年たちの笑顔まで思い出した。

「はい。ここを訪れた時──キーブレードを継承してもいいと思える子がちがいたんです。でも、すでにテラが継承していたようなのでやめたんです」

 無垢で無邪気だった子供たちのことを思い出すと、自然と笑顔になる。ミッキーがピョコッと耳を動かした。

「えっ? まさか、その子たちの名前は?」
「確か──ソラとリク──」
「なるほど。じゃあきっとここに──」
「えっ?」

 あの幼かったふたりがどうしたのか。ピンときていないこちらへ、ミッキーは険しい表情のまま説明してくれた。

「今、僕と扉を閉めようとしているのは、アクアが出会ったその二人なんだ」
「あの二人が!?」

 そうか、十年経っているのだった──当時、幼かった彼らだって、ヴェントゥスくらいに成長しているはず。
 リクはテラに継承を受けていたが、ソラまでとは。

「彼らがキーブレードを初めて手にしたこの地。その裏となる闇の世界側のここに、僕が探している闇のキーブレードがあるはずだ」

 詳細を説明してほしかったのだが、その前に何か嫌な気配と共に地面が揺れだし、ミッキーが駆けだす。

「時間がなさそうだ。急ごう!」

 よくよく探してみると、滝つぼの側に洞窟の入口が見えた。怪しいと思って近寄った瞬間、洞窟の中からハートレスの群れが竜巻のようにあふれ出てきて、こちらの行く手を阻むかのように襲いかかってきた。




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