フィリアが脱兎のごとく隣へと逃げたあと、改めてソラと向き合った。まだフィリアが消えた先の通路を見ていたので、声をかけてやる。

「ずいぶん遅かったじゃないか」
「リク!」

 フィリアのことで百面相してたソラは、ハッとこちらを睨みつけた。

「リク、何でこんなことするんだよ!? 何やってるかわかってるのか?」

 こんなこと、好きでやっているはずがないだろ!
 つい答えそうになった言葉を呑みこみ、冷静を取り繕ってそのまま返す。

「ソラ。おまえこそ何をしてるんだ? あちこち飛んでっちゃ、そのキーブレードを得意げに振り回してるだけじゃないか」

 あっけなく言葉を詰まらせたソラが、その手のキーブレードを見やった。その武器を扱う者の使命とやらのせいで、他のやつらの頼みを聞いてまわり、自分やカイリがどんな状況に陥っているかなど想像もせず、呑気にこちらを後回しにしているソラに苛立ってしまう。

「フィリアだって、さっき俺が助けていなきゃハートレスに食われていたぞ。傍にいる子すら守れないくせに、本当にカイリを助ける気があるのか?」
「それは――」

 ソラがしゅんと下を向いたとき、隣の部屋から二人分の悲鳴がした。駆けつけると、フィリアとピノキオが巨大なハートレスの牢獄のような腹の中に収まっている。

「ソラ! リク!」

 わめくピノキオの横で、フィリアが助けを求めている。
 後から入ってきたソラが隣に並んだ。

「倒せるか?」
「やれるさ! リクと俺なら」

 調子のいい返事に鼻を鳴らす。しかし、今はいがみ合ってる場合ではない。それにキーブレードの勇者とやらのソラの実力を測るにもちょうどいい。

「ついてこれるか? ソラ」
「そっちこそ!」

 ソウルイーターを強く握り、ソラたちとハートレスへ向かってゆく。




2.1.26




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