リクが言っていた通り、私たちはちっぽけな欠片の世界で生きていたのだというのが、広大な星の海へ出たときの、一番初めに抱いた感想だった。どこまでも続く深い闇のなか、たまにキラキラッと現れる光ばかりを目で追った。
操縦席に船長さながら腰かけるドナルドは、ハンドルを慣れた手つきで動かして、漂う岩石らを上手く避けていた。ジッと窓から外を見ていたソラがすげぇ、と呟くと上機嫌に言葉を返す。
「僕らは、このグミシップで世界をとびまわるんだ」
「でも、ハートレスのシップがじゃまするんだよね」
「あれに乗っているの、全部ハートレスなんだ……」
グーフィーの指す方向から色とりどりのシップが魚の群れのようにやってきていたが、あれらすべて敵だなんて。星の輝きよりも多いそれらはこちらを見るなり襲ってきて、早速、戦闘になってしまう。ドナルドはチップとデールの助言に従い逃げ回ったり、光線で打ち落としたりしているが、続々新手が現れてきりがない。世界はこんなにも魔物たちで溢れていて、その全てが自分たちを狙ってきているのだ。ついにグミシップが被弾しメーターが悲鳴をあげたとき、義務付けられていた笑顔をすっかり忘れて震え上がった。
「ドナルド! 囲まれてるぞ!」
「わかってる、しっかり捕まって!」
ぐんと重力がかかり、シップが何度も大きく揺れる。照明が点滅し、機械からビーッと音が鳴った。このままシップが壊れたらどうなるのだろう……"死"という文字が脳裏を過る。
「エネルギーが減っている! これじゃあ速度がだせないよ!」
「フィリア、笑って〜!」
チップとデールの声に応えようとした瞬間、またシップが派手に揺れた。悲鳴をあげ、頭を抱える。
「このままじゃ墜落するぞ!」
脂汗だらけの笑顔でドナルドが叫ぶ。分かっているが、どうにも頬が強ばってしまって笑えない。
「だめ……だめ、怖い……!」
痛々しい音ともにまた船がグラついた。
「フィリア! フィリア、こっちを見て!」
呼ばれて視線だけをソラに向けると、アプッと頬を膨らませた寄り目顔があった。虚を突かれ、一瞬何もかもを忘れてしまう。気がつけば笑顔になっていた。
「――いっけぇぇ!」
ドナルドが最大加速で敵の包囲網を強引に突破する。グングン引き離し、なんとか敵のシップが見えない場所までたどり着いたとき、全員が深い息を吐いた。
「……ソラ、ありがとう」
「なぁ、今度から、怖いときとか、泣きたいときは俺を見てよ」
ニカッと歯を見せてソラが笑う。
「俺がいつだってフィリアを笑顔にしてやるからさ」
「うんっ」
ソラがとてもかっこよく見えて、かあっと頬が熱くなった。ソラと一緒なら、この先どんなに怖いことも、きっとがんばってゆける。
「見て! 新しい世界だよ」
チップとデールの音声を聞いてドナルドがシップの方向を調整すると、ピンク色に輝くきれいな世界が浮かんでいた。
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