2度目の別れのときが終わり、その後の練習でようやくソラがドッヂロールをマスターした。グーフィーに「覚えが早いね」と褒められて、まんざらでもなさそうだ。
「アビリティがあれば、いろいろなことができるようになるんだ。いっぱい集めようね」
「もういいかい? 早く出発しようぜ!」
ソラが世界の扉を開こうとし、またしてもドナルドに止められる。
「ちゃんと用意をしてからだってば!」
「なんだよ、まだあるのか?」
ドナルドは懐からエアリスからもらった500マニーを取り出した。
「旅に必要な買い物もしなくっちゃ。ソラはいくらもってるの?」
「えーと、このくらい」
ハートレスを倒すと、わずかにマニーが落ちるらしい。ソラの所持金と500マニーを合わせ、先ほどユフィに勧められた店に向かった。店主は3匹の小さなアヒルたち。ドナルドの姉、ダンベル・ダックの子供なのだという。彼らの世界は闇に飲まれていないものの、商売のため気骨にもここで店を開いているらしい。
「あっ、ドナルドおじさん!」
「いらっしゃーい」
「なにか買っていってよ!」
赤い服がヒューイ、青い服がデューイ、緑の服がルーイというらしい。客と見るや、それぞれ杖や盾をどう? どう? と熱心に見せてくる。
「杖かぁ……」
ヒューイに見せられたモーニングスターの青い持ち手にそっと触れてみる。魔法の道具とあって、先端の星に薄い魔力が宿されているのがわかる。これを持って戦う姿を想像し……うん、魔法使いらしいかも、とひとり頷く。
「それ、入荷したばっかりなんだ。叩いても使えるんだよ」
「叩くの? これで?」
「大丈夫、頑丈に作ってあるから」
貸してもらい、えいっ、と杖を振ってみる。持つだけなら問題はないが、振り続けていると重く感じてきて、武術の心得がない自分が格闘戦を挑むのは無謀に思えた。
悩んでいると、突然、ヒューイがこちらを見て「ところでさ」と声をあげる。
「キミ。以前、ボクたちと会ったことない?」
「え?」
「ずうっと前に、見たことあるような気がするんだよね」
そのとき、グーフィーに盾をねだられていたドナルドが「ダメダメッ!」と大声を出した。
「旅に余計な買い物はダメ! まずはポーション! あとエーテル! はい、グーフィー、はやく持って!」
ドナルドが商品棚にあったきれいなビンを、たくさんソラとグーフィーに渡してゆく。
「だからって、こんなにたくさん持ってくのか?」
「あっ、私も手伝う!」
両手にいっぱいポーションを抱えたソラたちに駆け寄り、運ぶのを手伝った。
グミシップとはその名のとおり、グミと名づけられた不思議な物質で作られた船だった。どこかカクカクなフォルムで、オモチャみたい。
「暗い顔をしていると、エネルギーぎれで漂流することになるぞ。何があっても笑顔を忘れずにね!」
ドナルドにくどいくらいに釘をさされ、乗船する。笑顔を浮かべ続けるのなんてヘッチャラだ。はじめはそう思っていた。
グミシップには3つしか座席がなかったのだが、グーフィーがポーションを船倉へ運んだ帰りに予備のグミを持ってきて、あっという間に座席をひとつ増やしてくれて、そこに座る。弾力があるが、ある程度の硬度もある、なんとも不思議な感触だった。ソラが「低反発だ」と言った。
運転席にドナルドが乗る。ソラが「俺も運転したい」とねだったが、ドナルドにすげもなく断られていた。しかし、あの瞳はきっと諦めていないだろう。
ドナルドがハンドルを握る。
「笑顔はいい?」
振り返るドナルドに、いっせいに「ニーン!」と笑う。
「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
そうして、真っ暗な世界の海への旅路が始まった。
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