爆音を聞きつけて、カフェバーからレオンたちが飛び出してきた。せっかくちゃんとお別れしたのに、別れの時、パートツーである。
「壁、壊しちゃってごめんなさい……」
まさか、こんなことになるなんて。魔法って怖いんだ。うなだれていると、目線をこちらに合わせたエアリスが、優しく肩に触れてきた。
「フィリア、魔法を怖がらないで。上手く使いこなせるようになれれば、きっと、あなたの助けになる」
「そうだよ〜! せっかくすごい魔法が使えるんじゃない。ビビッてるなんてもったいないよ」
「エアリス……ユフィ……」
「壁だって、シドならちょちょいのちょいで直してくれるだろうしね!」
ふたりの慰めがじぃん、と胸に響いた。
「うん、ドナルドに教えてもらいながら、使いこなせるようにがんばるね」
「僕も、ガンバルよ……」
ドナルドが若干頬を引きつらせていたが、そこは追求しないことにする。
そんなやりとりをしている横で、レオンがソラをじーっと見つめていた。ソラが視線に気づくと、ようやく気まずげに口を開く。
「2番街の家に、ポンゴとパーディタというダルメシアンが住んでいるんだが……」
いったん言葉がとまる。ソラが不思議そうに首をかしげた。
「どうしたんだ、深刻な顔して」
「ひどく落ち込んでいる。子犬たちとはなればなれになったせいでな」
元いた世界がなくなってしまったとき、101匹の犬の家族はバラバラになってしまったという。99匹も子犬がいたのに、1匹すら行方が知れないらしい。
「スコールったら、心配で心配でしょうがないんだよ」
「レオンと呼べ」
レオンがユフィを軽く睨んだ。表情に似合わず、頬がちょっと赤くなっている。
「ね、ソラ。子犬を探してあげて」
「……頼む」
「わかった。まかせてよ、必ず全員見つけるから」
快く引き受けるソラの横で、グーフィーは「がんばろうねぇ」と笑い、ドナルドは「簡単に安請け合いしちゃって」と心配していた。リクとカイリの2人に会えなくてもこれほど寂しいのに、その数が99ともなると、その悲しみを想像するだけで気の毒だ。
レオンには聞こえない音量で、こそっとユフィが耳打ちしてくる。
「スコ……レオンってかわいいとこあるよね」
「かわいい……?」
ニコリともしない大人の男のひとが、かわいいかどうかは分からなかったが……初対面の印象から今もやっぱり怖いけれど、不器用なだけで、ほんとうは優しい人なのかもしれない。
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