深い暗闇を呪われた炎が照らす。別の世界の様子をここへ繋がせていた。その中央には鍵を手に、得意げな顔をした子ども。かき集めていた客たちは、想定外の事態にどよめいていた。
「あんなガキが、どでかいハートレスを倒しちまった! あいつ、なにもんだ!?」
自身の頭に燃える青の炎をチラチラさせながら、冥界の支配者が叫ぶ。
「あれがキーブレードの力だ。あの子供の強さではない」
蛇をかたどった杖を撫でながら、砂漠の王国を牛耳る男が静かに諭す。
「あの子をハートレスにしちまえば、話は早いってわけだね」
深海の住民に恐れられている魔女が、ぬめる八本の脚をくねらせた。
「そういや、小僧といっしょになった二人組、あれでも王≠フ家来らしい。見たかよ、あの間抜け面」
荒くれ者どもを束ねる船長は、失った片腕につけたフックをぎらつかせながら炎の中のアヒルと犬を見て口元を歪める。
「おまえさんの顔も、負けちゃいないぜ」
恐怖と悲鳴を愛する街で影の支配者を名乗る麻袋の男は、下品に笑いながら船長をからかった。たちまち船長の怒気が膨らむ。
「黙れ!」
「おやめ」
机を叩きつけ、腰のレイピアに手を伸ばしたところを御する。プライドが高く、己こそが頂点だと思っている者たち。それぞれ誇るにふさわしい実力を備えているものの、それゆえ矜持を傷つけられるのを許さぬため、扱いには気をつかう。
ひとまず矛を収めた船長を見やり、それから炎の中の少年を見つめる。先ほどの彼の戦いぶりは、過去に出会ったキーブレードの勇者たち≠フ足元にも及ばない。恐れるに足りぬ赤子のようなものである。
「キーブレードと選ばれし者。闇の扉を切り開くか、それとも――闇の深さにのみこまれるか。どちらに転んでも、利用価値はあるさ」
そして幼い勇者の横に立つ少女の姿の皮肉さに、くつりと笑みがこぼれた。
★ To be continue... ★
H26.12.27
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