集めた丸太たちをロープでぎゅうぎゅうに縛り付ける。四人が乗れるサイズまであともう少し材料が要る。

「じゃあソラは残りの材料を集めてね」
「へ?」
「私の話、ちゃんと聞いてた?」

 さっきの夢見が悪かったから、もう一眠りしたいなあと考えている最中に、カイリが半睨みで話しかけてくる。重要な部分を聞き逃したのはバレバレだったので、へらっと笑ってごまかした。

「ゴメン、もう一回」
「もう!」

 カイリはプンスカ怒ったように、両腕を腰に添える。

「だから、イカダをつくるのに必要な材料を集めて欲しいの。ソラが集めるのはね……」

 司令官たるカイリに与えられたノルマは丸太二本に大きな布を一枚、ロープを一本。先に材料を探しに行ったリクとちょうど仕事量を半分に分けたらしく、思ったよりは少なかった。

「それじゃあ、行ってくるか」
「ソラ、私も一緒に行く!」

 カイリと待っているのかと思いきや、ぴょっこりフィリアがついてきた。瞳をきらきら輝かせて、まるで散歩を待ちわびた子犬みたいだ。彼女はカイリと同じように、ある日、この島に流れ着いた。それまでの記憶はすっかり失くしてしまったらしく、その影響か同じくらいの年なのに小さな子と話しているみたいだ。自分はなぜか彼女によく懐かれていて、こうして暇さえあれば、自分の後を付いてきたがる。

「いいけど、材料を集めてくるだけで、楽しいことなんて何もないぞ?」
「ソラのお手伝いがしたいの。ダメ?」

 そう言われて、断る理由なんてない。二つ返事で答えると、今度はカイリにも「行ってきていい?」と確認していた。カイリはニコリと笑い「いいよ」と小さく手を振ってやる。

「ソラ、ちゃんとフィリアを見ててあげてよ。どこかに置いてきぼりにしないであげてね」
「おう、わかった」

 任せとけ、と答えるとカイリは安心したように頷き、そしてあっとまた口を開く。

「それと、もうサボっちゃダメだからね!」
「わ、わかってるってば」

 これ以上、説教されたら敵わない。フィリアを連れ、さっさと出発することにした。





 波打ち際に倒れていた丸太を一本確保しつつ、滝の近くに立っていたワッカを見つけた。自分たちより少しだけ年上の彼は、いつも球技に使うボールを脇に抱えている。

「ワッカ〜」

 フィリアが元気よくワッカに手を振った。ワッカも気づくと、こちらへ二ッと白い歯を見せる。

「おっ!おまえらも来たのか」
「うん」
「ワッカはいま、島に来たの?」
「ああ、ティーダのやつが寝坊してさ。セルフィとさんざん待たされたんだ」

 フィリアがワッカが話している間に、邪魔にならなそうな場所へ丸太を置いた。

「よっ! ワッカ」

 いつもの挨拶をしつつ、木剣を握る。木剣を見たワッカはボールを構えなおした。

「よっ! 今日も絶好調って感じだな」
「なあ、あそぼうぜ!」
「遊びじゃない、試合だ試合!」

 ワッカはブリッツというスポーツをはじめてから、勝負を試合と呼ぶようになった。「どう違うんだ」と訊ねたことはあったが、ぐだぐだと長い返答だったので、なんだったかすっかり覚えていない。

「ソラ。サボってると、またカイリに叱られちゃうよ?」

 さっそく勝負を始めるため砂浜に並ぼうとしたとき、フィリアが怯えた小動物のような顔で言う。
 彼女がここへ来たばかりのころ、木剣を貸し与えチャンバラに誘ってみたことがあった。フィリアは誘いに喜んだものの、いざ勝負を始めたら目を瞑ったまま木剣をハチャメチャにぶん回し、勝手に足をもつれさせ海へ転げ落ちてしまった。その後も何度か教えようと試みたのだが同じことを繰り返し、ついにリクが「フィリアにチャンバラは向いていない」と断言したころには、みんなフィリアをチャンバラに誘わなくなっていた。

「ちょっとだけならいいだろ? セルフィのところで待っててよ」
「うん……」

 背を押してやれば、フィリアはしぶしぶ桟橋へ向かってく。




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