明日、テラとアクアのマスター承認試験が行われる。マスター・ゼアノートがあの地に行く際、絶対に見つからぬことを条件に自分も同行することが許された。ヴェントゥスの状態を一度直接確認することと、もし、不測の事態が起きたら速やかに対応できるようにするためだ。
あいつのことをずっと憎んできたので、実際に会えたら冷静でいられるかわからない。本当はすぐにでもΧブレードになりたいのだ。アクアの方に見込みがあれば、あいつなどすぐに消してもいいだろうという考えが、マスター・ゼアノートに反していると分かっていてもいつも心の隅にあった。
――そして、フィリアにも会える。
彼女のことを考えると、嫌でも心臓が強く脈打ち、期待が胸に溢れるのを感じる。結局、どう足掻いてもこの気持ちを消すことは叶わなかった。
ヴェントゥスを通さずに見る彼女はいったいどんな感じだろう。髪の香り、唇の色、瞳の輝き、実際に見ると違った印象を受けるのだろうか。
この計画のため、フィリアにはヴェントゥスと旅をさせなくてはならない。
Χブレードはヴェントゥスの心で作るので、相性を上げさせておいたほうが成功率が増すかもしれないことと、ヴェントゥスの中でフィリアの存在が重要になればなるほど、いざというときの利用価値が増すからだ。
自分が満たされるために、彼女から何もかもを取り上げるのだ。愛されることなど、とうに諦めていた。かといって、違う男と愛し合わせなければならないことは許し難いことではあるが、ヴェントゥスなど、いつか自分になる存在だ。それに、姿は見えているのに相手に届かない苦しみを彼女に教えることができるだろう。復讐してやるなどというつもりはないが、自分と同じ気持ちを深く知ってもらうのは悪くない。
憎しみや恨みは心に深く刻み込まれる。だからヴェントゥスたちを消す時は、彼女をひどく傷つけられるよう、残酷に見せてやるつもりだ。今まで自分を知らなかったフィリアの心を、なんでもいい、囚えられるのならそれ以上に幸せなことはない。
ヴェントゥスの心を感じると、いつもは寝ている時間に星空を見ていた。つながりのお守りなどと、くだらぬおもちゃを揃いで持って喜んでいる。
黄色のおまもりを大事そうに持って、微笑んでいるフィリアが見えた。その顔を曇らせたいと思いつつ、一方で欲しくて欲しくてたまらない。
「必ず、手に入れてみせる」
繋がっている、同じ星空のもと。誓うように呟いた。
H25.12.22
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