フィリアを見送った後、ヴァニタスは荒野に戻ってきた。
いつ見ても殺風景な場所だ。あの地から帰ってきたばかりだからか、いつもより強くそう感じた。
「ご苦労だったな」
自分を待っていたゼアノートが労いの言葉をかけてくる。それに無言で頷いて、後ろにあった、巨大な岩壁に背を預けた。
「てっきり、あやつがあの娘を連れ出すものと思っていたが」
ゼアノートが薄く笑う。あいつ――ヴェントゥスの性格から、自分もそう考えていた。やはり、すべてが順調に進むというわけにはいかないようだ。
「ふむ。しかしこれですべてが筋書き通りに正された。ますますおまえには働いてもらうぞ、ヴァニタス」
「はい。マスター」
答えるとゼアノートは闇の回廊を開いて、どこかへと消えていった。
ひとり残されたヴァニタスは仮面をとる。乾いた荒野の風がはねた黒髪を揺らしたが、胸に湧き上がってくる不愉快な気分は風に当たったくらいでは無くなくならなかった。
仮面を脇に抱えながら先ほど会ったフィリアを思い出す。実際に会ったのは今日が初めてだったが、ずっと彼女のことは知っていた。
ヴァニタスは目を閉じ、近くて遠いヴェントゥスの心に意識を集中する。こうすることでヴァニタスはヴェントゥスの心を知る事ができる。自分がずいぶんと前から心を覗いていることをヴェントゥスは知らないし、想像すらできないだろう。
ヴェントゥスの心が、驚きと困惑そして喜びに満ちていくのがわかる。無事フィリアと再会できたのだろう。
そこで目を開いて舌打ちをひとつ。やはりこの気持ちは当分晴れることがないようだ。
ヴァニタスは壁から背を離し仮面をつけなおす。再び闇の回廊を目の前に出現させると、その中へ早足に消えていった。
★ To be continue... ★
執筆:2010.3.3
修正:2010.5.22
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