胸がでかいって、全然うれしくない。

「へ?何でッスか?」
「だってさあ、可愛いなって思う服も胸がきついし、どっかにぶつけるとすっげーいてーし」
「どっかの人には妬みにしか聞こえないッスよそれ」
「体重だって増えてそうな気がするし、大体胸が大きいとそれを支えるために体がもっとでっかくなるんだっけ?それもやだしーもーやだ」

はあ、女の子って大変なんスねえ、なんて黄瀬は笑ってみせたけど紫原には全然笑いごとではない。胸がでかいって本当に良い事なんてないよ、と巨乳を羨ましがっている子全員に言いたいくらいだ。小学生の頃からでかくなり始めればそういう話題に目覚め始める年頃の男子は体育の時に胸の大きい子のブラ当てとかするし、中学生になった今でも胸の事とか言うし、昨日は電車で痴漢にあったし。ほんとわけわかんない。と紫原はまた溜息を吐いた。

「紫原、溜息なんて吐いてどうしたんだ」
「あ、赤ちーん」
「赤司っち、なんか紫原っちが」
「わーわー黄瀬ちんやめてよ」

急いで黄瀬の口を塞ぐ紫原であったが赤司はその一言を見逃さず「何だ?俺に何か隠し事でもあるのかな?」と赤司スマイルで言えば紫原はう、と少々唸った後に観念したように「…笑わない?」と一言言った後、赤司は先程の怖い笑顔とは裏腹にやさしい笑顔で「勿論だよ」と言った。その言葉を信じて赤司に今までの話の流れを話した。

「…ふむ」
「紫原っち可愛いッスよねー!俺は紫原っちのお胸もいいと思うんスけど、」
「…何だって?」
「…あ、黒子っちに呼ばれてる気がするんで俺はここで失礼するッスね」
「そうか」

何とも不自然な流れに紫原は不思議に思い「黄瀬ちんどうしたの?」と聞くと「紫原っち…俺、まだ生きたいんス…」と言い残して行ってしまった。更に分からなくなって赤司に聞くと「黄瀬はちょっとかわいそうな奴なんだよ」と言ったので「なるほどね〜」と言っといた。黄瀬ちんはかわいそうな子なのかあ、紫原はその日から黄瀬のイメージはかわいそうな奴、となった。

「で、紫原」
「ん〜?」
「明日から一緒に登下校…いや、今日から一緒に帰って明日から一緒に学校へ行こう」
「え、ほんと?」
「ああ、迷惑じゃなければな」
「ぜんぜん!赤ちんと登下校うれしいし!」
「なら良かった」

にこり、と笑って紫原の頭を撫でる。しかし今までの話の流れで何故こういう事になったのかわからなかった紫原は「でもそれって胸にかんけーあること?」と聞いた紫原の質問に赤司は「そうだよ」と言うので紫原はそれを理解は出来なかったが赤司が言うのだから間違いない、と信じた。

「赤ちんと登下校はうれしーけど、やっぱでかいのやだなー」
「それは流石の俺でもどうにもならないな」
「んー……、ねえねえ」

少々考えた末に紫原が赤司を呼びかける。それに対して「ん?」と反応を返してやると紫原は自分の胸をぐ、とつかんで寄せた。それに赤司は何をやっているんだ、と言おうとしたがそれよりも先に紫原が言葉を発する。

「赤ちんはでっかいのすき?」

赤司は衝撃を受けた。とりあえず紫原は座っていて赤司は立っている為に紫原が上目使いなのと若干開いてるシャツから綺麗な谷間が見えることとまず紫原が胸を自分で寄せている為に、一応健全な男子中学生の一人の赤司には色々衝撃がすごかった。それでこそ表情はあまり変わらなかったが確かに赤司は混乱をしていた。混乱すぎたせいか口で「紫原の全部が好きだよ」と言ってしまった。その言葉に次は紫原が驚く。赤司は少々正気を取り戻し、はっとするがまあ紫原だし大丈夫だろう、とちらりと紫原の顔を見やると、なんと、普段常に眠そうな目が綺麗に見開かれて顔が真っ赤なのが見えた。なんということだろう、今度こそ赤司は完璧に混乱した。


世界はもうすぐとろけだす


(121005:箱庭)



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