※すごくグロ注意



ぐしゃりと嫌な音が耳をすり抜けた。目の前では殺人鬼らしき人が人を殴っている。えぐいなあと思いつつもそれを見ながらお菓子に手を伸ばす俺は相当すげえってこの前褒められた事を思い出しつつそれを頬張った。口の中でぐしゃぐしゃと噛みつぶしながら見ていると目の前では殺人鬼が切ったそれを食している場面だ。不思議と口にあるものが気持ち悪く思えたけど気にせず飲み込んで次へと手を伸ばす。目の前では殺人鬼の後ろに武器を持った男の子が立っていて、「ぼくもたべたいな」それに気づいた殺人鬼が振り向こうとした所でその男が刃物を降り下ろし――、「敦」良い所で止められたそれを見て後ろの赤ちんへと視線をやる。

「またこんなものを見ているのか」
「なんか面白いじゃん」
「…趣味が悪い」

リモコンを俺の隣に置くとココアを持ってやってきた赤ちんが俺の隣へと座った。特にそのリモコンへと手を伸ばして続きを見ようとも思わない為、赤ちんから少しぬるくなったココアを受け取ってからそれを少しずつ口に含んでいった。口の中が一気に甘ったるくなるのを感じて先程の映像が脳内再生される。ココアのあの独特のしつこさが一気に気持ち悪く感じた。少し顔を顰めると赤ちんがほれみろという顔で熱々のコーヒーを飲んでいる。

「赤ちんってこういうの好きじゃないよね」
「敦は」
「俺は別に好きじゃないけど」

嫌いでもないよ。目の前の武器が振り下ろされる瞬間で止まったそれを見て呟いた。自分は人殺しをした事もする予定もないからこういう事をする人の気持ちが分からない。だからそれを知る為にこれを見るんだよ。うーん。どんなのかなあ。赤ちんがこちらを見た。俺の視線は映像にいったまま「赤ちんしってる?」とだけ。知ってるはずないのにね。

「知ってるよ」


ゆっくり赤ちんをみた。その顔は微笑んでいる。そうなんだ、口の中のココアの後味がきもちわるい。きっと深く知っちゃいけないことなんだと赤ちんの隣にあるリモコンに手を伸ばそうとした。不意に見えた赤ちんのシャツにしみがあったのは、赤ちんの髪の毛の一部がちょっと違う赤色だったり茶色だったりしたのは、うん。ココアでもこぼしちゃったのかな、気にしない。気にしない。リモコンを掴んだ。「なあ、敦」再生を、押す。

「僕も、食べたいな」

ぐしゃり。振り下ろされた刃物は俺の心臓へと突き刺さった。


130203


やまなしおちなしいみなし。きっとこの前見た映画の所為だと言い張る

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