「赤ちーん、みてみて」

放課後のバスケ部、皆が汗水流して練習をする中ひとり紫原が赤司の元へ駆け寄る。紫原の呼びに答えるつもりで「何だい?」と言えば紫原はべー、という効果音がつくように口を開いて舌を出した。その意図が分からず赤司は顎に手を当て少々考えたが紫原が「すっげーあまいの」と言うものだから赤司は紫原の口の中にあるものを見た。そこにあったのは、飴玉だ。結構大きいもの。

「飴玉が甘いのは当たり前だろう」
「きれーな色だから買って舐めてみたらすっげーあまいの、砂糖くってるみたい」

ほう、と相槌をうって「でかくてね、これでもちいさくなったんだよ。もう飽きちゃった」と紫原が話を続けた。それに少々驚いて先ほどの大きさを思い出してみる。それを今まで舐めていたという事は、嗚呼。それは飽きもするだろう。

「噛んでしまう、のは無理か」
「うん、まだちょっとでかいもん」
「捨ててしまえばどうだ?」
「もったいないよ。お菓子を捨てるとか、絶対ムリ」

だろうな、と赤司は考えたがもう策が無い。少なくとも紫原が赤司に練習を中断して飴玉を見せに来ただけ、とは違うだろう。何かしら策がほしくて赤司の元まで来たのだろうし、と赤司は考えて「…そうだ」と呟く。良い案があるよ、と紫原に伝えると少し嬉しそうに「なになに?」と寄ってきた。

「紫原、ちょっとしゃがんでごらん」
「んー?うん」

紫原は若干ふしぎに思ったが赤司に逆らう訳はなく大人しく赤司の目線に合わせてしゃがんだ。その瞬間赤司がぐい、と紫原を自身へ寄せて紫原のくちびるへ赤司の唇をくっつけた。流石に紫原も驚いて「え」と言葉を発する為口を開いた瞬間に赤司の舌が紫原の口へ入っていく。予想もしていなかった行為をされて紫原は大変焦ったが赤司を否定するような事はしなかった。赤司もそれに気分をよくし更に深く口づけていく。此処まで来ると練習に没頭していたキセキ達も驚いて赤司と紫原に釘づけになる。しばらくして満足したのか、赤司と紫原の唇が離れた。紫原は酸素を吸い込むためにはあ、と呼吸を繰り返している。赤司といえばがり、と音をたてて口の中の飴玉を砕いていった。

「あかち、どうして」
「ああ、どうやらキスをしている内に溶けて小さくなったらしくてね。どうだ?良かっただろう?」

それはキスに対してなのか、それとも飴玉が無くなった事に対してなのか、密かに最初から最後まで見ていた黒子と桃井は思ったが、紫原が元気よく「うん!」と言った事と赤司のキスの最中のキセキを見る目がとても「見なかった事にしろ」という視線だったような気がするためにその疑問は二人と、キセキの胸の内にそっとしまっておいた。


あまあいお菓子と共にあなたといっしょにとけてしまいたいとおもう


121002 赤紫
つかいまわしだったりする



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