「…赤ちん、俺おとこじゃないみたい」
「え?」

何を言っているんだこいつは、確かにそう思ったが口には出さず紫原の話の続きを求めるように見つめていたら何故か泣きだしてしまう。それには僕も大分予想外で驚きと慌てを隠せないように僕よりも頭一つ分でかい紫原の頭を撫でながらゆっくりとどうしたんだ、と聞き出すと泣きながらも「おれ、赤ちんとおなじように下のものついてないって」差し出したハンカチで鼻をかみながら紫原はそう言うが、え?と僕はまた混乱した。こいつ自分が男だと思っていたのか。

「紫原はおとこになりたかったのか」
「だっ、て…」
「うん?」
「赤ちんを、お嫁さんにしたかったんだもん…」

え?僕は更に混乱する。流石の僕ですら処理が追いつかなく、頭を撫でる手すら止めて目を丸くした。いや確かに紫原の理解能力でお嫁さん、というものはイコールずっと一緒にいる事、そして男がもらうもの、と理解しているのなら話は分かる。前者は別にいい、大体合っている。だが問題は後者だ、少なくとも紫原は前にプロポーズとやらを男が女の子にするものなんだよ〜と微笑ましく話していた事を覚えている。そうだ、この流れでいくとつまりは「…紫原、僕は女じゃないぞ」え?今度は紫原が混乱した。その口で何かを言おうとするが今はやめてくれ、と悲願するだけである。

「赤ちん俺より小さくてかわいいのに…?」

うるんだ瞳で僕を見るのはとても可愛い、可愛いのだがその発言は解せない。少なくとも僕は小学生平均身長の少し上だ、ほんの少し、少し上だ。しかし紫原がでかすぎる為にそう見えるんだろう、仕方ない。だが可愛いとは。

「僕は可愛くないぞ紫原」
「赤ちん可愛いよ!だって俺より小さいもん」
「………」

男のプライドがこれほどまでに粉々にされた事があっただろうか、いやない。目の前が真っ白になる感覚に襲われたが紫原が少し考えてまた泣きそうになったので僕も色々言いたい事を我慢してまたどうした、と問いかける。

「じゃあ俺たち、ずっと一緒にいれないの?だめなの…?」

ああ可愛いなこいつ。色々紫原との人生設計を考えて来て、計算外な事が起きたのはこれで初めてだが仕方ない。得るものは早く得た方が得だ。そう思って紫原のやわらかい頬に少し背伸びをして口付けると、紫原は涙さえ引っ込んだのか大きな目で僕を見た。あかちん?と鼻を鳴らしながら僕を見つめる紫原に微笑みながら「僕が紫原をお嫁さんにすればいいんだよ」と所謂プロポーズを言った。

「…?」
「紫原は女で、僕は男なんだから結婚をしても何の問題もないんだよ」
「…ずっと一緒にいられるの?」
「もちろん」
「じゃあ、赤ちんのお嫁さんになるし!」

ああ、予定では高校生ぐらいに綺麗な夜景のレストランで赤い薔薇の花束をささげながらプロポーズをしようと思ったが、もうそんな事は紫原の微笑みでどうでもいい。今日は紫原と僕の両親の顔合わせをいつにしようか決めよう。あと来ていたお見合いの話は全部断らなくてはな、元から紫原以外を嫁にするなんて微塵も考えていなかったわけだが。とりあえず紫原は幸せにする事は決めた。


小学生でプロポーズしちゃう赤司さま

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