色んな事があった高校時代を卒業して、俺は大学生になっていた。俺はもう東京に戻っていて、赤ちんも皆も皆東京に戻ってきて今は同じ大学だ。色んな誤解が解けて最近はまた昔みたいに仲良くやってるし、バスケもたまにしていたりする。一部の人はほんとにプロとかになったけど。ああそういえば、室ちんはというとアメリカに戻っちゃった。今もやり取りは続けてて、ふとこっちに来ると会ったりする。室ちんも火神と一緒にバスケ続けてるみたい。(んー懐かしいなー)

「敦」
「わ」

ちなみに今は赤ちんの家に来て色んな昔の写真とか見てる最中だ。そんな写真を見てたら昔の事を思い出したりしていたわけだ。しかしそっちに意識が飛んでいたからなのか、赤ちんの呼び掛けに俺は全く気付いていなかったらしく、赤ちんが俺をじっと不思議そうに見てる。なんでもない、と言えばあまり気にしていなかったみたいにお茶を口につける。赤ちんも、高校時代よりずっと大人っぽくなって、今はこんな広い部屋に一人暮らしをしている。赤ちんはいつでも余裕を持ってるひとだからこれくらい赤ちんには当たり前なのかもしれない。俺と同じ一人の家よりずっとおおきい。

「赤ちんの部屋は広いよねえ」
「そうだな、少し広いかもな」

少しってぐらいじゃないと思うんだけどなあ、やっぱり赤ちんは良い意味で普通じゃないよね、そんなとこもすきだけど。まあ俺達は所謂恋人という間柄で休日にもこうやって家に来ては雑談とかしてるし、たまに外に一緒に出掛けたりもする。男同士だから、とかそういう線はとっくの昔に超えたり躓いたりしたから今更気にしたりとかしない。ていうかどうでもいいって俺も赤ちんも思ってるぐらいだ。それでいつも家に来ては広いなあと言っている気がする。台所もトイレもシャワー室も、2m越えの俺が全然窮屈って感じないんだからすごいんだと思う。

「でも赤ちんにはちょっとでかすぎじゃね?」
「…敦、僕が小さいと言いたいのか?」

一気に目つきが変わったのを察知して「ちがうってば」と否定すれば多少睨まれもしたが俺から目を逸らした。それを確認して俺はまた「こんな広いとこで寂しくないかなって思っただけー」などと言ったが特にその言葉を深く考えずに発して先ほど作ったばかりのクッキーに手を伸ばした。ちらりと赤ちんが一瞬こっちを見てから静かに「確かに少し心細いな」と言った。え?と耳を疑ったが確かにはっきり聞こえたし、何だか赤ちんらしくないなあと思いながらも(赤ちんなりのジョークかなあ)俺も軽い気持ちで口を開く。

「じゃあ俺が住んだげよっかー?なあんて」
「そうだな」

思わずクッキーを掴む手に力が入らずに落としてしまった。そろりと赤ちんを見てみれば目線は違う所に行っていたけど俺の視線に気づいたのがこちらを向いて微笑んだ。その微笑みの理由が分からなくて何か言葉を喋ろうにも喋れないまま母音のみ発せられる。

「…ジョーク?」
「本気」

いつの間にか俺から目線は外れている赤ちんを俺はじっと見つめながら色々考えたけどやっぱり結果的に答えは一つしかないわけで、「す、む」と何とかその二文字を喉から追い出すように出すと赤ちんが驚いた顔をしてこっちを見ているのが見えた。その反応はまさか予想外だ。

「…本当にいいのか?」
「は?え?冗談だったの?」
「いや、了承をもらえるとは思っていなかった」

つまりそれって冗談って事じゃね?うわあどうしよう、残念ていうかええ?ぐるぐる回る脳内がそろそろキャパオーバーしそうで布団に閉じこもりたい状態になってくると赤ちんがぼそりと「…参ったな、自分で想像していたよりずっと嬉しい」ばっと勢いよく赤ちんを見ればその顔はちょっと赤くなっていて今度は違う意味でぐるぐる思考が回る。震える声で赤ちん、と呼べば赤ちんも俺を見て「敦、もう一度聞く」

「一緒に、住まないか」


後に分かった事だけど赤ちんの家が無駄に広いのも全部いつか俺と暮らす為のものだったらしくてそこで俺はもう一度赤ちんに惚れ直したり。


121105
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