僕は狂っている。自覚はしているよ、でも制御が出来ないんだ。そう言ったらのんきにそっかあなんて言っていた昔の事を思い出す。目の前で息が出来なくてもがく彼がとても愛おしくてぞくりとした。思わず笑みがこぼれる。くるしい?と聞いても返答は返ってこない。当たり前だ、僕が首をしめているんだから。声なんて出す暇があるわけない。苦しそうにしていてもお前はちゃんと僕を見ているんだ。その視線がたまらない。だけどお前は僕を睨まない、恨まない。ましてやこれがおわった後は満足した?なんて笑顔で聞いてくる。そんなお前が愛しいよ、僕の言う事なら何でも聞いて、何も口答えなんてせずに黙って僕の言う通りにするんだ。何を言っても、何をしても。例え僕が今ここで首を絞めるのをやめないでお前が死んだとしてもお前は満足するだろう、あの世に行っても僕を恨む事はしない。そういう確信がどこかに僕にはあった。ぎり、と力を強めると苦しそうな声が聞こえる。そろそろやめるべきかな、どうしようか。今の所最高記録だ。涙を浮かべる彼を見て手を離そうとしたら今度は彼の手が僕の首に伸びてきた。(ああ、殺すのか)どこかでそう思った僕は抵抗もせずにいたが予想とは違ってお前は僕を抱きしめた。お前はどこまでも優しいんだな、愚かだよ、見ていて呆れる。口に出してそう言えばお前は何も言わずにただ「赤ちん、大丈夫だよ」そう言うんだ。何度も繰り返して、赤子をあやすように。自分だって苦しいだろうに、つらいだろうに。お前はどこまでも僕に縛られている。そして僕はそんなお前をいつまでも放してやれずにこうやって逃がさないようにしている。愚かなのは僕の方なのか、それでも僕はお前を放せないんだ。僕から放れないでくれ、そうして僕は今日もお前を閉じ込めてしまうんだ。











121027

×
- ナノ -