※氷→火前提

室ちんはよくわからない。でもそれよりもっとわかんないのは皆の方だった。みんな「あいつはいつも笑顔だな」とか「氷室さんは誰にでも優しいよね」とか、何言ってんのっておもう。室ちん全然笑ってねーし、優しくっていうかそれ遠回しにどうでもいいって言ってるようなもんじゃないの?それを室ちんに言ったら驚いた顔して抱きしめられたし、室ちんよくわかんない。

でもさ、一番よくわかんないのは室ちんが俺に対する扱いと行為だよ。だってそれって好きな人にするもんじゃないの、ちゅーだって、ぎゅーってするのだって。夜にすることだって。ぜんぶぜんぶ好きな人にするもんでしょ。そう言ったら室ちんは困った顔をして「俺が好きなのはアツシだよ」って言ったけど、違うじゃん。室ちん俺なんて全然すきじゃないじゃん。室ちんが好きなのは俺じゃなくて、ただあいつのかわりを俺にしているだけだよ。室ちんはあいつにできない事を近くにいる俺にしているだけ。流石にこれは室ちん本人に言えなかったけど。室ちんは俺を見た事なんて一度もないよね、最後に仕返しのように言ったことを聞こえないふりをしたのかな、室ちんはただ笑うだけだった。

試合では確かにあんな事をいっていたけど、やっぱり室ちんはあいつの事が好きなんだとおもう。電話だって、あいつからの電話だったらすぐにでるし、嬉しそうに話してるし、切った後にすごい寂しそうな顔をする。だからおれが「室ちん」って呼ぶとすぐに俺を見て笑ってくれる。でもそれは俺に向けてるんじゃないのかなって考えたらくやしくて「室ちんのばか」って背中を蹴った。それでも室ちんは笑いながら「なんだ、嫉妬?」って言うから、馬鹿じゃねーのって言ってやる。これが全部俺にむけて言ってる言葉だったらすこしは笑えたのに。

「室ちん」
「うん?」
「だいすき」
「……アツシ?珍しいな」
「言ってみただけだし」
「…はは、俺も大好きだ」
「うっせーし」

愛せもしない奴等よ
(気づいてる?室ちん、いつも俺とする時に小さくたいが、って呼んでるんだよ。だから俺は精一杯だいすきって言ってるのに。さっきだって大好きって言ったばかりなのに、気付いてなかったんだね。そうだよね、室ちんにとって俺は俺じゃないんだから俺の言葉なんて一言も聞いちゃいない。だから別にいいよ、俺も愛さないから。)

121019

- ナノ -