※前日の話から読む事をおすすめします

「紫原、良かったら今日家に来ないか?」
「え?いいの?」
「ああ、紫原さえ良ければだが」
「うん!赤ちんの家行ってみたいー」
「そうか。じゃあ6時くらいに来てくれ」
「あれ?赤ちんと一緒じゃねーの?」
「少し用事があってな…すまない」
「ううん、いいよー。じゃあ6時に行く」
「地図を渡しておくが、迷ったら人に聞くか俺に連絡してくれ」
「(人に聞く?)うん」



という事が学校であり、現在6時。迷う事なく赤司家までこれたは良かったのだけれども。紫原は人に聞けと言う赤司に納得した。何せ今紫原の目の前にあるものは家とは呼べない程にでかい。和風な作りではあるが、いかにも漫画やらで出てくるお金持ちのような家だった。ほんとにこれが赤ちんの家?と思ったのだがちゃんと赤司、と書いてあるので赤司の家には間違いないだろう。入るのに少し戸惑ったが呼び鈴を鳴らすと中から人が出てきて紫原を見る。その圧力に負けて紫原は慣れない敬語を使いながら「紫原、…です」と言った。瞬間にその使用人(とやらなのか)は笑顔になり「お話はお伺っております。こちらへどうぞ」「(うわあ、こんなのってほんとにあるんだあ。っていうか赤ちんが俺来る言っといたのかなあ?)」と紫原は密かに思いながら後をついていく。中に入っても勿論迷路のようなでかさであったが使用人が迷いそうになる度に「こちらです」と言うので迷わずに来れた。そして連れてこられたのは電気のついていなさそうな薄暗い部屋。これは何なんだろう、と紫原が聞こうとした所で使用人は「ではここで失礼致します」と言って行ってしまった。「(え、俺どうすればいいの。つか赤ちん何なんだし、呼んどいて放置とかありえねーし……もしかして家間違えた?でも赤司って書いてあったしなあ…うーん…)」紫原は明らかに困っていた。目の前に襖らしきものはあるが(薄暗くて良く見えない)明けても中は真っ暗に見える為とても開けたくない。使用人をもう一度探しに行こうにも一人では必ず迷う。ならもういいや、と紫原は何も考えずその襖を開けた。

「…やっぱ真っ暗だし」

少々不安だったが、一歩その部屋へ踏み出すと、それと同時にぱっと電気がついた。ついた、と思って何となく上を見た途端にぱーん、という大きな音に驚いて急いで視線を上から外した。そしてそこにあるものに紫原は更に驚いて珍しく目を大きく見開く。

「え、あ、皆?え?赤ちん?は?」
「誕生日おめでとう紫原」
「お誕生日おめでとーッス!紫原っち!」
「おー、紫原おめでとーさん」
「誕生日おめでとうなのだよ、紫原」
「ムッくんお誕生日おめでとうー!」
「お誕生日おめでとうございます。紫原くん」
「…え、俺今日たんじょーびなの」
「はは、そうだよ。紫原の事だから忘れてると思ったんだけどね」
「だからこうしてサプライズをしようって思ったんです」

黒子が珍しくへらりと笑って赤司が普段は見せない優しい微笑みを顔に浮かべて紫原に花束を差し出している姿を見て、不覚にも紫原は感動してしまった。あまりお菓子以外では嬉しい、という感情や笑顔を表に出さない紫原でも自然と頬が緩む。ぱさりと差し出された花束に手を伸ばして受け取るととても幸福感に満ちた。素直に「ありがとお」と言ったら次は青峰と黄瀬が「よし!パーティやんぞパーティ!」「そーッスよ!ケーキも頑張って作ったんスから」と紫原をぐいぐいとケーキの前まで押し、そして紫原がケーキを見た途端、目をきらきらと輝かせ「うわー!すっげー、でけー!ねえねえこれ食べていい?」「勿論!私達が腕によりをかけ」「…さっちんが作ったの?」「大丈夫なのだよ。人事は尽くした」「え?どういうこと?」「何でもないですよ、気にしないでください」こうしてやっとケーキを口に運んだ紫原である。「うん、すっごい美味しい」と言う紫原にその場の全員がほっと胸を撫で下ろした。

「じゃあ、はいこれ」
「ふへ?」

未だにケーキを口にぱんぱんと詰めている紫原に対して桃井が紫原に可愛い包み箱を差し出す。紫原は不思議に思いつつも口にあったケーキを飲み込んで受け取った。「開けてみていい?」と言ったら勿論という答えが返ってきたので紫原は遠慮なく綺麗な包みを剥がす。そこから出てきたものはお菓子の家だ。色んなお菓子があって、それが家の形としてまとまっている。思わずその場にいた全員がすげー、と言ってしまう程には、それはすごかった。「ありがとおさっちん!」「うん。本当におめでとうムッくん!」微笑ましい、と皆が和んだ所で今度は黄瀬がやってくる。

「んじゃあ俺もどーぞッス!」
「わあ、今度はなにー?」

桃井からもらったものを大事に置いて次に黄瀬からのプレゼントを受け取る。「開けてみてくださいッス」と言われ素直にリボンを解く。ばさり、出てきたものは大きなマフラー、だった。まあそれは一般的に見て、であり紫原にとっては普通のサイズだったのであるが。

「え、黄瀬ちんこれ」
「へへ、紫原っちいつも「冬やだーさむーい」って言ってたからつい…嫌だったッスか?」
「ううん、あり、がと」

確かに紫原にとって普通のマフラーは小さすぎたものもある。だが黄瀬が手作りしたのだろうか、このマフラーはとても大きく紫原にぴったりだった。それをぎゅっと抱きしめる紫原の姿に黄瀬も嬉しく微笑む。ちゃっかりマフラーの色が黄色な所に紫原は気付く事は無かったけれども。そして次に青峰がいつまでも微笑んでる黄瀬に苛々したのか「ほらよ」と半ば無理やり黄瀬を退かせて紫原にプレゼントを押し付けた。「中身はバッシュだから開けてみろ」と言われ急いで開けると確かにそこにはバッシュが入っていた。

「え、なんで、」
「ばーか、ボロボロだったじゃねえかお前のバッシュ」
「…うん、ありがと」

サイズもぴったりだ、あの時バッシュをじっと見ていたのはこれの為だったのか、と黒子は納得する。最も紫原がこれに気付くかは分からないけれども、確かに紫原は喜んでいるしそれを見て青峰もにかりと笑った。次に何か視線に気づいた紫原が緑間をじっと見る。そのまま首を傾げていると緑間が紫原に対してプレゼントらしきものを投げつけた。それをキャッチはしたが投げる事はないだろう、と緑間を見たら案の定「別にお前の為じゃないのだよ」と顔を真っ赤にして言ってたのでこれ以上つっこむのはやめよう、と大人しく箱をあけるとばらばらと細かいものが出てくる。一瞬疑問に思ったが全部出してみると底には人形が見えた。

「ミドチン、え、なにこれ、すげー!」
「今日の天秤座のラッキーアイテムが人形だっただけなのだよ!」
「でも今日のラッキーアイテムだと、これを一日で作った事になりますよね。いくら緑間くんでも」
「黙るのだよ黒子」
「偶然に偶然が重なったんだな」
「……っ、お前にあう物が見つけられなかった。だからせめてもの気持ちで作ったのだよ。…受け取ってくれると有難い」

緑間が珍しく素直な感情を出したのを紫原は嬉しく感じ素直に「すげー嬉しい、ありがとー」人形をぎゅうっと抱き締めて笑顔で言えば緑間も微笑んでくれた。今日は何だか皆優しいなあ、と柄にもなく幸せだと感じたのだ。

「じゃあ次は僕で、紫原くん。これをどうぞ」
「あ、黒ちん。なあにこれ、本?」

黒ちんらしいなあ、と紫原は思ったが正直紫原はあまり本を読まない。読むとすればお菓子特集やらそんなものばかりだ。しかし折角のプレゼントを受け取らない訳にもいかなく、一応受け取りはしたが少々渋い顔をしたのがばれたのだろう。黒子が「ああ、開けてみてください」と言う為、ここで読めって言うのかなあと思ったが大人しく包みを剥がせば「わ」

「お菓子?」
「はい。手作りなので自信ないんですけど、美味しいと有名な店の写真を集めてみました」
「わあ〜!すげー、おいしそう!黒ちんすげー!」
「喜んでもらえてよかったです」
「うん!黒ちんありがとー!」

これで今度の休日はお菓子巡りしよう、と喜んだ紫原に黒子もとても微笑ましく思った。普段あまり感情を表に出さない黒子も今回ばかりは笑顔でいる。そこから「じゃあ、そろそろ本格的にパーティーを楽しもうか」と赤司が言って皆はそれに同意したが紫原は「(あれ、赤ちんは何もくれないのかな)」本人的にはとても期待していただけにとても残念であったが「(まあ、いいかあ)」という結論に至って皆と一緒にパーティーを楽しんだ。





「うわもうこんな時間ッスか」
「あ?何時だよ…ってもう8時かよ早えな」
「そろそろお開きにするのだよ」
「今日は楽しかったね〜」
「そうですね、今日はとても充実した日でした」
「あの、さあ」
「ん?どうした紫原」
「……みんな、今日祝ってくれて、ありがとうって、…それだけだし」

いつも皆に感謝するとか、そんなのよくわかんないから、でも本当にありがとうって思ってるし、とぶつぶつ紫原が呟いてる中でキセキは驚いていた。まさか紫原が他人に感謝とかするなんて、とか何でか紫原が可愛く見えるなど。色々言いたい事はあるのだが一言にまとめると「どういたしまして」だったのだ。

「なんか照れくさいし」
「可愛いですね紫原くん」
「はあ?」
「黒子、いい加減帰るのだよ」
「そうッスね、帰りましょうか。赤司っち今日はどうもッス」
「ああ。また今度集まろうか。…と、紫原は残るように」
「へ?」
「おい赤司おま」
「青峰くん殺されますよ」
「…」
「か、帰るッスよ…紫原っちまたね」
「あ、うん」

ひらひらと手を振って皆を見送り終わり、紫原は赤司を見る。赤司は視線には気づいているがあえて知らないふりをして「敦」と名前を呼んだ。それにどきりとし「うん」とちゃんと声が出るか出ないかの所でぐい、と引っ張られる。急な事なので倒れそうになったが、何とか踏ん張って目の前を見ると綺麗な赤色の瞳が見えた。思わず綺麗なそれに見とれていると「敦」ともう一度紫原の名前を呼んだ。「(そういえば赤ちん、おれのことむらさきばらって呼んでなかったっけ)」ぼんやりと考えて口に出そうとするがその言葉さえもその唇に飲み込まれるようにキスをされた。一瞬その行為がよくわからずに紫原は呆然とする。口が離された後には「敦、キスをする時は目を閉じるんだぞ」と論されてしまった。それは一応知っているんだけどなあ、とひそかに思ったが紫原は口には出さない。というか呼び方はもう「敦」にかわってしまったのか。

「赤ちんどういうこと」
「…お前に回りくどい事を言っても通じない事は分かるからはっきり言うぞ。付き合ってくれないか」
「え?俺おとこだよ?いいの?」
「そんなお前はいいのか」
「……お、俺はあかちんすきだし」
「俺は男だぞ?」
「それ俺のセリフだし。俺は赤ちんの事大好きだからいいんだし」

少々大きな声で紫原は叫び、赤司は驚いたがすぐに微笑んで「そうか」と愛おしそうに紫原を撫でた。紫原は赤司に撫でられるのが元から好きなため気持ちよさそうに目を細める。

「俺、誕生日に赤ちんもらえるとかびっくりした」
「ああ、そうだ。これを誕生日に渡そうと思っていたんだよ」
「え?まだ何かあんの?俺赤ちんで充分しあわせだよ?」
「はは、というか敦をもらったのは俺の方だからね。…はい」

紫原の目の前に出されたものは指輪の箱らしきものだった。恐らくまあ中身は予想通りに指輪なんだろうけど。流石この家の息子というべきなのか、紫原は現実味のなさで他人事のように「(赤ちんかっけー)」などのんきに考えている。それを理解した赤司が紫原の左手を手にとり薬指にそれをはめる。きっと紫原が2m越えじゃなく、そして女の子であったら微笑ましいプロポーズなのだろうけれども、紫原は2mは超えているしましてや女の子でもなかった。けれど二人にとってはそれが最高の誕生日で、プロポーズであることには変わりない。紫原は自分の左手の薬指できらきら光る指輪と赤司を交互に見る。そして赤司はしばし紫原を見つめて「愛してる」とまた口付けをし、その日は紫原は赤司家に泊まったのだ。




「紫原っちー!おはよーッス!赤司っちも」
「俺はおまけか」
「ち、違うッスよー」
「おー、紫原ー」
「んー、黄瀬ちんも峰ちんもおはよー…」
「眠そうですね紫原くん」
「黒ちんもおはよー…あ、ミドチンも」
「ずっと横たわっているがどうしたのだよ」
「ああ、少々無理をさせすぎたらしくてね。すまないな敦」
「んーん、赤ちんのせいじゃないし」
『……!?』
「ん?どうした?」
「あああ赤司っちちち、そそそそのの」
「おお、お前、…お前…!!」
「……詳しく話してもら…いや…やっぱりいいのだよ…ああだが…」
「赤司くん?冗談ですよね?いやちょっと昨日はしゃぎすぎて痛いだけなんですよね?あと敦呼びって何ですか僕も」
「さて、練習をしようか」
「昨日はたのしかったなー」
『(どっちの意味でだよ)』

121009

むっくん誕生日おめでとう!だいすきです!



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