のゆの場合 男たちの場合
「部長・・・」
「なんだ」
「久雨さんのこと、結構気に入ってましたよね。」
「はあ?」
「見ていれば分かります。威嚇しているようで、結構気遣っていましたよね。」
「・・・はぁ、新人に気遣うのは当たり前だろうが、誰が来たって同じだよ。」
「暖かい眼差ししてましたよね。」
「・・・なんだ、嫉妬してんのか?」
「嫉妬なんて・・・・・・してるのかもしれません・・・。」
「・・・・・・っ・・・たく。んな心配してる暇があるなら、仕事しろ、仕事。」
「ちぇ・・・」
「なあなあ、今度の新人、いい子ばっかりじゃねえ?」
「へえ、平助くんてば、もう手を出したの?平助くんのくせに?」
「俺のくせにってなんだよ!しかも、手なんか出してねえし!」
「総司、そういうあんたは、随分と堂々と新人一人引き抜いたそうじゃないか。」
「水城ちゃんのこと?引き抜いて良かったよ、仕事出来るよ、あの子。」
「仕事が出来るか分かる前に引き抜いたんだろ?何かあんじゃねえの?」
「うむ。俺もそう思ったが・・・」
「んー、ボイコットするような大胆な子かと思ったら、案外純粋だったんだよね。ちょっとからかったんだけど、素直に反応してくれるから、そうだね、面白かったかもしれないね。」
「素直に認める総司というものも・・・気持ちが悪いもんだな。」
「失礼だね。そういう一くんだって、新人の子と組んで新企画を詰めるって?顔を真っ赤にさせてしどろもどろになってるそうじゃない。」
「あー、一くん、女の子に免疫無いもんな。」
「気にならない子には、顔を赤くしたりしないじゃない。顔が赤いってだけで、気になってる証拠だよね。」
「顔を赤くなどしていない。」
「無意識で赤くなるってだけで、意識してる証拠だってば。」
「へえ、今度見に行くよ。」
「へ、平助こそ、どこが気に入ったのだ、今日の半日しか一緒に居なかったのだろう。」
「いや、なんか、ちっこくて可愛いっつーかさ、緊張で泣きそうになってるの見て、守ってやらないとなーとか、ちょっと思っただけだろ!」
「何で急に怒り口調になるのさ。」
「照れ隠しだろう。」
「てかさ、左之さんどうしたんだろうな、なんか元気なくってさぁ。」
「話を変えるということは、図星なんだね。」
「じゃなくて!本当だってば!なんかさ、全然意識されてねえんだよ〜って、嘆いてさ。」
「へえ、左之さんがねえ、珍しい。」
「・・・・・・何に意識されていない?それだけではさっぱい分からぬ。」
「ああ、一くんは、そうだろうね。」
「まーでも、明日からなんか仕事楽しくなりそうだなぁ〜」
賑わう居酒屋の一角で、楽しげに繰り広げられる会話であった。
「あの、社長?どうされました?」
「・・・・・・薄桜会社のまみ、と言ったか。久しぶりに話の通じる女だったな。」
「はい?社長?」
「何でもない。」
終わり
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