早とちり大歓迎

うぅぅぅ・・・。

朝から、初っ端から、こんな醜い音声をお届けしてしまって、申し訳ありません。

が、わたくし、今、最高に最低な気分なんです!

それもこれも、あの二人が悪乗りするから・・・!!

あの二人・・・、水城、まる、お、覚えていなさい・・・・・・。

と、心の中では思うのに、それを表に出す事が出来ない小心者の久雨なのでした・・・トホホ。


その日は朝目が覚めたときから、身体全体が不調を訴えていた。

けれど、だからといって会社を休むわけにはいかないのが社会人の辛いところ。

せめて薬だけでも・・・と思ってベッドを起き上がって薬箱へと向かう私の目に飛び込んできたのは、無情にも家を出なければいけない時間をさしている時計の長針と短針。

悲鳴一発、急いで仕度をして家を飛び出した私の手には、しっかりと薬だけは握られていて・・・・・・。


でもって、現在に至ります。

はい。

ここは給湯室。

だって、お水を買う時間も無く、会社に滑り込んだんですもの。

とにかく、タイムカードだけはしっかりと時間内にきって、そのままここへ・・・。

はぁ、間に合って良かった・・・・・・。

と、シンクへと凭れかかってグッタリと溜息を吐いている久雨へと、声がかけられた。

「・・・・・・久雨ちゃん?どうしたの、真っ青だけど。ここじゃなくてトイレ行ったら?」

この声は、のゆちゃん・・・?

そう思って顔を上げると、案の定ドアを閉めて入り込んできたのは、のゆちゃん。

うちの営業課のまとめをしている課に属しているので、部屋が隣と言うこともあり、社内ではよく顔を合わせる方なんだけど・・・。

「あれ?のゆちゃんが給湯室に居るって・・・珍しい・・・。」

「そう?私は結構朝に来てるけど・・・、そうだね、確かにこんな時間から使う人ってあまり居ないね。まみちゃんが来るくらいで、私からしたら、久雨ちゃんが居るほうが珍しいよ。」

「そ、そうなんだ・・・。」

確かに、私は三時のおやつの時間ばかり給湯室に入り浸ってるからな。

朝に来るんだ・・・、のゆちゃんは。

「で・・・?二日酔い・・・だよね、その様子。」

鋭い・・・。

いや、鋭いもなにも、それ以外に見えないでしょうね・・・。

手には胃薬、それも二日酔い用。

水を汲もうとして、手には湯のみが握られていて、そのまま力尽きてシンクに凭れて・・・。

そんな私を尻目に、のゆちゃんはポットにお水を入れ、スイッチを入れている。

「道理で。」

淡々と用意をしながら、のゆちゃんが呟いた。

そして、私の手から湯飲みを外して、その中に水をなみなみと注いで手渡してくれた。

「まるちゃんと水城ちゃん、遅刻するってさ。」

「あーーー・・・。うん、さっき、メール来た。」

しかも、いつも通り胃薬は給湯室に置いておいてって・・・。

あの二人は、全く!!

「三人で飲んだの?こんなになるまで?一体何があったの?」

心配そうに覗き込むのゆちゃんには申し訳ないけど・・・。

「なにも・・・、なんにも別に無いの・・・。ただ、ウォッカを飲み始めたら止まらなくなったとか言って、ガンガンと・・・。」

「・・・・・・酔っ払いって、何するか分からないからねぇ・・・。」

そんな事を優しく言ってくれるのゆちゃんの目が、遠くを見つめている・・・。

震える手で薬方を破っている時、再び給湯室のドアが開いた。

「あれ、おはよう。」

「おはよう。」

「おはよう・・・ございます。」

まみさんだぁ。

本当だ、まみさんもこの時間に来るんだ〜。

「久雨ちゃん、二日酔い?こりゃ、まるちゃん午前中に来れるかな・・・。」

私を見るなり、やはり一発で見抜いたまみさんが、心配顔になる。

「無理かもしれないねぇ。何か問題でも?」

「うん、私この後出ちゃうから、ちょっと頼みごとしたかったんだけど・・・、他の子に頼むしかないかな。」

「って言いながら顔が嬉しそう。泰衡さんの所だね?」

「ふふっ、そうなんだ〜。あ、でもこの時間はあくまでもお仕事だよ。」

「おやおや、じゃあ違う時間に甘く濃密にすごして居るのだね。」

おおっ、まみさんてば大人な過ごし方をしている!

うう、羨ましい!!

女三人でウォッカ飲んで二日酔いで死んでる場合じゃない!!

緑茶の香りが給湯室に満ちていく中、ようやくまっずい薬を口の中に放り込んで飲み下した。

「さて、私はもう行かなきゃ。」

お盆に湯飲みを二つ乗せたのゆちゃんが一息ついて、湯飲みを一つまみさんに手渡した。

そして、もう一つに氷を入れて、手渡してくれた。

「はい、口直し。じゃ、お仕事頑張ってね。」

「有難うございます!」

「まみちゃん、最近遊んでくれないから寂しいなぁ。」

「あれ〜、そんな事言って、のゆちゃんだって最近付き合い悪くなったけどなぁ〜。」

「いや・・・その・・・、それは、仕事だし、残業ばっかで・・・ねぇ。」

ホホホ・・・と、どこか白々しい笑いを浮かべてそそくさとのゆちゃんが部屋を出て行った。

その直後、まみさんがドアに耳を当てて、こちらに手招きした。


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