素直に顔をさらす
王子に歩み寄る
自室に逃げる
ガラスの靴を見せにイク

選択肢が表れた。
と言うか、このゲーム、既にバグってないですか!?
ガラスの靴を見せにイクって、ガラスの靴なんか手元に無いですし、イクって、イクって!!
迷わずに名前はイクを押しそうになる手を堪えて自室に逃げるを選択した。
身体が動くようになって、すぐに踵を返して自室に逃げ込むと、鍵をかけようとおもって、手が空ぶった。
「あぁ、鍵が無い!!」
そりゃそうだ、メルヘンにそんな高機能は無し!
狭い部屋に逃げ込んだとして、逃げ場なんか無いのに・・・。
ふと、山南が最後にくれた赤い液体を思い出した。
胸の谷間に押し込まれたけれど、コルセットをしていない今、あれはどこにあるだろうか・・・?
胸元を服の上から探って、見当たらない。
チャックを下ろして上着を脱ぐと、中のシャツのボタンを外して覗き込んで・・・。
お腹の辺りに落ちていた小瓶を見つけて拾い上げているところで、無情にもドアが開け放たれた。
「・・・・・・そんなにやる気満々で待たれると、引くんだけど。」
「うわぁっ!花も恥らう乙女に向かって、色気も感じずに引くとか、ありえません!」
「有り得ないはこっちの台詞でしょ。」
胸元を隠してじりじりと後ずさる名前に、沖田が面倒くさそうに追いかけてくる。
「シンデレラって言うんだって?君さ、何で昨日の舞踏会に来なかったの?第二王子がそう言うの、プライドが許さないの知ってるのでしょ?」
「し、知りませんよそんなの!大体、王様の招集じゃなかったんですか!?」
「王様の招集だよ。だから余計に僕は腹が立つんだけどね。」
ベッドまで追い詰められて、それ以上後ろに下がれなくて、名前は座り込んだ。
すると、沖田が容赦なく肩を突き飛ばして、ベッドに仰向けに転がされた。
「あの第二王子に付き従って町までわざわざ来なきゃいけない僕の身にもなってよね。」
圧し掛かられているような想像を掻き立てられてしまう状況に、名前の顔に熱が集まった。
シャツのボタンを留めようとする手が震えてしまって上手くいかないことに沖田が気づいて、手を頭上で拘束されてしまう。
「怯えてるの?」
違う・・・、緊張で震えているだけで、怯えている訳では無い。
けれど、声まで震えてしまいそうで返事が出来なかった。
「ふぅん、威勢が良かったのは最初だけか。」
噛み付きそうなほどに顔を近づけてきた沖田が、首に手を置いた。
締めるつもりで置いたのだろうけれど、その触れ方が優しかったために、名前が身悶えた。
「・・・・・・。」
冷めた瞳で見下ろしてくる沖田の瞳が、怪訝そうに歪んだ。
そして、首筋に指をつつ・・・と滑らせた。
「にああぁぁ!」
ある一点で指が止まり、確認するようにくるくると円を描いてみせたりもする。
「ひええぇぇ!!や、やめっ、くすぐったっ!!あ、やめて・・・っ!」
ブンブンと顔を振って抵抗する名前を見つめる沖田の口元が、次第に弧を描いていく。
「それ、変装のつもり?意味が分からないけれど、似合わないからやめたほうがいいよ。」
変装のつもりなど毛頭ないのだけれど。
これは標準装備だっただけで、別に自分が選んで着けた訳では無い。
大体、自分の意思では寝るときでさえ外す事が出来なかったのだ。
スチルじゃないんだから、外させてください!と、私だって思いましたよ!!
心の中で悪態を着くが、言葉に乗せるどころではない。
沖田の指が相変わらず自分の首筋や耳や鎖骨やらを滑るように触れていく。
「いあああっ、ぁ、や、くすぐった・・・あ、ダメです!変な・・・、変な気分になっちゃっ!あ、それ以上、触れ・・・るな、です!」
「変な気分になっちゃいなよ・・・。」
耳元で沖田が囁いた。
熱い吐息の後に、濡れた感触が襲ってきて、名前の身体が更にくねって、逃げるように動いたけれど、手の拘束が解けずに失敗した。
「もう一回、君に会って確認したかったんだよね。」
沖田がそう言うと、マスクとサングラス、三角巾が次々に外されていった。
そして、極上の笑みが色ガラスを介さずにもたらされた。
「あぁ、やっぱり、君だ。」
「・・・・・・何ですか?ここまで来て私を苛めたいのですか?沖田は意地悪ですっ!」
「苛めたい?・・・・・・ある意味、そうかもね。」
「そんなに嫌われましたか!!嫌われているとは思っていましたが、リアルじゃないのに傷つきます!」
顔を歪めて訴える名前に、沖田がきょとんと瞳を瞬いてから首を傾げた。
「僕に好かれる要素が、どこかにあった?」
「なっ・・・・・・ないですよ!どうせ無いですよ!!だから、そこを退いてください!」
半ばやけっぱち。
だって、確かにそう言われてしまえばそうなんです、好かれる要素なんかどこにも無かったですよ!
いつも口喧嘩ばかりで、嫌われる要素しか持ち合わせていません!
「だよね。なのに・・・変なんだよね。」
「何がですか?退いてください!」
「君を見ると、ドキドキするんだ。」
「女性の胸元が露になっている姿を見てドキドキしなかったら、それはよっぽどその人に興味が無いか、男にしか興味が無いか、見慣れているかのどれかですっ!」
「あぁ、見慣れているから別にそこはドキドキしないよ。」
「なんですと!?」
ショックすぎる自己開示に抵抗する力を失った名前を見て、沖田がにっこりと微笑んだ。
「そうゆう顔も勿論弄り甲斐があるんだけどね。」
そう言いつつ迫ってくる沖田の顔。
唇に触れるのは、唇かと思いきや、沖田の濡れた舌・・・。
ぺろりと舐められて、全身がビクリと緊張する。
途端に真っ赤に染まった顔を手で隠す事を未だに許されていない。
「もうしばらく、確認させてよ。試しに付き合ってみない?」
「・・・・・・は?」
「拒否権は無いからね。」
再びかぶさってくる顔、今度はきちんと唇を重ねられているらしい。
意味を把握しきれない頭は、ぐるぐると空回りしている。
ただ、手を拘束している手が二本になり、優しく指を絡めてくるから、それに応えるように握り返したら・・・、口付けが深くなった。

ノーマルエンド


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