「あれぇ、こんな所で何してるの?舞踏会はお城の中だよ。・・・僕に会いたくて抜け出してきちゃったとか?」
薄暗い庭に点在するランプに照らされて、オレンジ色に頬を染めた長身の・・・沖田!!?
「お、沖田・・・!?」
「おきた・・・?何それ?僕は衛兵だけど。」
「沖田総司っ!!!」
「それ、君の名前?」
「違います、私は岡崎名前です!」
「ふぅん、名前ちゃんねぇ。普通の名前。」
・・・・・・それを言われると痛いです。
確かに名前なんてどこにでもある名前と化してしまいましたから・・・・・・って、ここはメルヘン!だけどヨーロッパ!!
そっか、良くある名前、確かにそうです。
うぬぅ、一生の不覚です、そんな事にも気づけないなんて、オタクを名乗って良い自信が磨り減りました!!
「ねえ・・・、迷っちゃったの?」
沖田が近づいてきて、握り締めている手を掴んで優しく撫でてきた。
その瞬間から、手が熱く火照りだして、どうにもジンジンと疼く。
顔にまで手の火照りが這い登ってきてしまいそう・・・。
「せっかくだから、僕と遊んでいく?」
沖田の誘いは危険です。
衛兵と言いましたか?
確かに、上半身を鋼色の甲冑で包み、腰元まで覆い隠している。
けれど、肩当から先までは甲冑で包んでいない、足も同様で、戦いに赴く格好ではない。
腰に差している剣も、剣、という感じがする。
日本の刀とは趣が全く違う。
手は皮手袋をしていたのに、わざわざ自分の手に触れるために脱いでくれたらしい、それで・・・、沖田の手は暖かいのでしょうか・・・。
「そんなにジッと見つめられると、苛めたくなっちゃうんだけど。」
くすり・・・と笑う沖田に、思わず身体が反応して、緊張して一歩後ずさってしまった名前を、驚いた表情で沖田が見つめてきた。
そして、口元で三日月を形作り、一歩踏み込んできた。
「嗜虐心を煽られる子だね、君。本当に苛めたくなっちゃうなぁ。」
「ひぅっ!」
皮手袋の指先を噛んで脱ぐと、その手で名前の首筋に指を這わした。
くすぐったさに首を竦めた名前を、沖田が満足そうに笑みを形作って、更に引き寄せた。
首筋を撫でた手が頬を包み込み、上向かせられると、沖田の顔が迫ってきて・・・・・・。
うわぁ、き、キスされてしまいますか!?
心臓が飛び出そうなほどに高鳴っている。
ギュッと目を閉じて先を期待してしまっていた名前の頬と手から、突然温もりが去っていった。
「・・・?」
何も起きなかった事で目を開いた名前の、三歩ほど離れた場所で、沖田が冷めた瞳で薄ら笑いを浮かべていた。
「・・・・・・沖田?」
「おきた・・・って、僕の事をそう呼んでいるの?なら、まぁ別にそれで良いけどさ・・・。」
腕を組んで、見下すように顎を突き出した沖田の方が見覚えがあり、名前の心に氷が滑り落ちていった。
「僕さ、すぐにやれる子って、好きじゃないんだよね。やりたい時だったら利用させてもらうけど、今は別にそんな・・・だし。」
・・・うわ、沖田です、この失礼加減は沖田ですよ。
メルヘンじゃなかったんですか?
これは、メルヘン乙女ゲームじゃ!?
それとも、こうゆうキャラですか!?
キャラと分かれば攻略の近道も分かりますが・・・・・・なんかもう、嫌ですっ!
沖田にそんな風に蔑まれるのは嫌なのです!
甘い雰囲気にならないなら、要りません!!
「誰が貴様となんかやりますかっ!こっちからお断りですよ!私は王子が誰かを確認するために庭に来たのです。貴様に用は無い!!」
言い捨てて、もと来た道へと立ち去ろうとした名前の身体が、動かなくなった。
それを見た沖田の瞳が、剣呑に閃いた。
ぞ・・・とします・・・。
動けないと言う事は、もと来た道へ行く選択肢は取れないという事。
ならば、先に進まなければいけない・・・。
だけど、あの瞳の横をすり抜けるとか、至難の業ですよ・・・。
怖い・・・・・・。
でも、あっちにしか進めない・・・。
・・・・・・ええい、女は度胸ですっ!!
突進するように沖田へと向かってよろよろと歩く名前を見て、沖田の笑う声が聞こえてくる。
必至に見ないようにして、横をすり抜けようと、ドレスを掴み上げて足を見せている事を恥じる事もせずに。
そりゃそうです。
私にとっては、足を見せる事は恥じゃないですからねっ!
すれ違い様、沖田が名前の腕を掴んで引き寄せて、顔を近づけて・・・。
「ひいぃっ!!く、くすぐったっ!あひんっ、だ、ダメですっ、そこ・・・あ、な何を・・・!?何をしますかっ!!」
沖田の茶色い髪の毛が耳に、肩に、頬に触れる。
そして、首筋に触れる湿った生暖かい感触に、チクッとした甘い痛み・・・。
離れた時に、名前はバランスを崩してそのまま横に倒れこんだ。
助けようとする手は無いどころか、腕を掴んでいた手すら放されていて、倒れるがままだ。
「ふぅん・・・、良い声で泣くんだね。それは覚えておこうかな。」
膨らませたスカートの向こう側にしゃがみ込んで、沖田が囁いた。
スカートの中がどうなっているのか、自分でも分かっていないだけに・・・、全てが見えているのではないだろうか、と不安になって、慌てて押さえると、押さえたところだけ器用に潰れる。
「君さ、靴があってないんじゃないの?」
「・・・へ?」
ふいに足首を掴まれて持ち上げられて、上半身を起こしていたのに後ろへと倒された。
「へぇ、綺麗な靴だね。」
・・・・・・こんな風に足を掴んで中も思い切り見えている状況だって言うのに、見るのは靴ですかっ!!
失礼極まりない沖田っぽさ全開で腹が立ちます!!
「放せっ!無礼者!不届き者!痴漢!!」
「ちかん・・・て、何?」
っかーーー!!
こんな時だけ都合よくメルヘンとか、本気ですか!?本気で言ってるんですか!!?疑います!!!
「この靴、貰っていくね。そっちの方が歩けるでしょ。」
するり、と足から靴が奪われていく。
足先に夜風がひんやりと当たり、両方とも盗られた・・・。
「か、返せ!それが無いと、話がっ!」
「話?何それ・・・?僕は親切をしたんだよ。だって、歩けないでしょう?」
「うぐっ、でも、それは私の・・・!」
足を解放されて、慌てて立ち上がろうとしているのに、スカートが持ち上がったりバランスを崩させたり、踏んづけて再び膝を着いたり・・・・・・。
しているうちに沖田は消えていた・・・。


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