Trarroria ciliegio3

数日後、電話連絡があった。

合格!

嬉しい!やった!無職とおさらば!これで貯金を気にせずに買い物が出来る〜!!

と喜んだのもつかの間・・・。

「皿洗い!メインの皿が足りねえぞ!」

「こっち、前菜のお皿も。熱いの渡されても困るんだけど。冷やす時間も考えて洗ってよね。」

「おい、デザートまだか?盛り付けにどんだけ時間かかってんだよ。」

戦場、毎日戦場です、買い物に行く暇なんかありませんでした!

「すいません、メインのお皿です!」

「三枚?足りるわけねぇだろ!」

「い、今すぐ!」

「だからさぁ、熱いの渡されても無理。冷やしておいてよね。」

「すいませんっ!!」

「あの、デザート・・・。」

「た、ただいまぁ!!」

ランチが終わると、グッタリ・・・。

ホールのテーブルをくっつけて、従業員全員でお昼ご飯を食べる、この時間私はいつもグッタリです。

「さくらさん、大丈夫ですか?」

正面に座っている千鶴ちゃんが気遣って、冷たいお絞りを手渡してくれた。

これで思い切り顔を拭いてしまいたいけれど、化粧・・・、いや、湯気と汗で崩れてて、化粧も何も無いか、いいや、拭いてしまえ。

「お、今日も豪快に拭いてるな。」

原田さんが目の前にパスタを置いてくれた。

おぉ、今日も美味しそうな・・・・・・豆腐が乗ってますが、さては今日は斎藤さんがまかない担当?

「どうだ、慣れたか?」

「全然です。」

「だろうな。」

屈託なく笑われると、怒る気力も湧きません。

「皿洗い遅すぎだろ。俺なら皿が足りないなんて事にならないぞ。」

グラスに水を注ぎながら偉そうに言う平助君の頭が土方さんにはたかれた。

「お前も最初は同じだろう。いや、もっと酷かったな。」

「酷くはねーよ!つかさ、何で俺がホールなんだよ、俺もサラダの盛り付けとかパスタとか出来るし!さくらだってデザートだけで大変だろ!」

はい、作り置き出来るとは言っても、盛り付けはその場でやらなきゃなので…、平助君カムバック…。

「お前が何時までたってもメニューの名前覚えねぇのがいけねぇんだろうが!何だよ、空豆のやつ、とか焼き魚とか!」

「あ、いや、これでも結構覚えたんだけど…」

「夜の酒の名前もひでぇよな。プスモーニって何だよ、スプモーニだぞ。ヴァーミリオンじゃなくて、ソーヴィニヨン!」

「間違っても分かるんだからいーじゃんかよ」

「そのような間違いをするような奴に、盛り付けや味付けなどの繊細な作業は任せられん、と言うことだ。」

「そうそう。」

「総司、あんたも大概だぞ…。」

休憩の食事時はこんな風にいつも賑やかで、楽しい。

「来月のケーキは決まったか?」

隣で大盛りパスタを既に食べ尽くした土方さんが聞いてくる。

ケーキ、一種類は月替りにしようという話になったのだけれど、それも考えて良いと言われて、責任を感じる。

「ケーキも良いんだけど…、暑くなってくるから、ジュレとか置きませんか?」

「ジュレ?」

「ゼリーです。メロンとか使えたら最高なんですけど、まぁそこは仕入れとかとも相談ですよね。」

「ゼリー良いですね!夏場はアイスばかりですもんね、作っても残っちゃって…。」

千鶴ちゃんが嬉しそうにうなづく。

「金を取れるようなゼリーが作れるのか?」

「ぱっつぁん、プロに失礼だろ。」

プロ…、プロと言いましたか、平助君!?

「出来ます!任せてくだせぇ!」

あ、意気込み過ぎてべらんめぇになっちゃった。

そんな私に穏やかな眼差しが注がれる。

良い職場で良かった。

それなのに、こんなことが起きるなんて…



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