◯◯付き 剣道部シリーズ

「これは、どういうことだ…?」

怒気混じりの声が背後から掛かって、私は和かに振り返った。

分かってる、分かってますとも。
あなたが何故怒っているのか。

「部費の為ですよ、先生。」

剣道部は、別に部費が少ない訳では無い。
むしろ、強豪校と言う事で、優遇されているくらいだ。

練習をサボりまくる沖田、どうしてか居合になり易い斎藤、はしゃぎ過ぎて怒られ易い藤堂、そして、我らがマドンナ千鶴ちゃん。

みんなのお陰で、我が剣道部はとても強いんです。

それもこれも、土方先生の鬼指導のお陰ですよ。

「剣道部で、喫茶店までは許可したが、物販は許可した覚えはねぇぞ?」

「物販、原田先生が許可くれましたよ。それに、生写真を飲み物に付けると、プラスいくら、っていうオマケです。物販じゃないです。」

「原田の野郎…」

苦虫を噛み潰した土方先生のお顔も、素敵です。
ふふふふふ。

「誰にどの写真が行くか、ランダムなんですよ。」

「そのせいで、外は大騒ぎなんだよ!」

「そうですね。中での交換は、部員が居る手前、気まずいですもんね。」

剣道部で借りている教室の外は、写真の交換会が大人数で催されている。
そのせいで、通行が困難になっているので、ヒラ部員達に交通整理をしてもらっているくらいだ。

私はと言えば、先生の話を聞きながら、紅茶やコーヒーを淹れて、それにどの写真をつけるか、適当に選んでいる。
配膳は人気部員にしてもらっている。
私はマネージャー、表舞台には上がらないのよ。

「で、先生?言いたいことはそれだけですか?一応、忙しいので手伝わないなら話しかけないでもらえます?」

そう言うと、渋々ながら紅茶を淹れるのを手伝い始めた土方先生の顔は、仏頂面のままだ。
何か、もっと大きな文句を言われると思ったのだけれど…。

「先生?」

「なんだ!?」

返事は、ささくれ立った棘のある声。

文句を続ける元気も無い先生に…、思わずウズウズして、私は言ってしまった…。

「先生の写真が人気ないから、交換の対象になってるから、そんなに元気が無いんですか?」

言われた瞬間、先生はギョッと目を見開いて、慌てて顔を顰めた。

「んなわけあるか!!こんな商売が学校行事でまかり通ってる現実を嘆いていたんだよ!」

「ふぅん、そうですか、そうですか。そうゆうことにしておきましょうね。」

思わず得意気な顔になってしまったけれど、それを見られまいと、淹れた紅茶とコーヒーをお盆に乗せて、取りに来た千鶴ちゃんに手渡した。
千鶴ちゃんは笑顔でそれを運んで行く。

入れ替わりにやって来た沖田が、土方先生を見て、私同様の笑みをこぼした。

「あれぇ、土方先生、写真の人気、僕の方が上だからって、そんなに落ち込まなくても良いじゃないですか。先生の写真だって、ごく一部には喜ばれてますよ。」

「そうだよねぇ。何を落ち込むことがあるんだか。全く見向きもされないヒラ部員に悪いですよ!」

「てめぇら…」

「あれ、図星だからってまた力でねじ伏せようとしてます。良くないなー、そうゆうの。教育の現場で働いている人とは思えないなぁ。」

「だから人気が出ないんじゃないですか?」

「くっ……」

お客さんも居るから大声を出せない土方先生を、こけおろしてから、沖田はオーダーを伝えて去って行った。
残った土方先生の手が、握り締められてプルプル震えている。

「ったくお前は…、新入生歓迎会からこっち、総司と組んでロクなことしやがらねぇ…。」

「人聞き悪いですね、組んでないですよ。」

そう、沖田と組んだ覚えは無い。
たまたま、弄り方が似ているというだけで、全くもって彼と一緒にされるのは面白くない…。

「先生、沖田と一緒にしないで下さいね。私は先生への愛ゆえの行動ですから。この物販だって、みんなで温泉合宿に行って、先生と混浴でドッキリ!したいから頑張ってるんですよ!」

まぁ、他の部員の目当ては、千鶴ちゃんとドッキリだろうけど。

「合宿に温泉旅館なんざ、使える訳ねぇだろ。学校の合宿所に決まってる。」

「ちょっと、私の愛の言葉は無視して、何で温泉旅館につっこむんですか。」

膨れ面で先生に顔を近付けると、鼻を抓まれた。

「愛ゆえ、ねぇ。ガキからの愛なんざ、求めちゃいねぇが…、まぁ、有難く受け取っておくよ。」

眉尻を下げて、情けなさそうに微笑む土方先生の表情に、思わず胸が高鳴ってしまって、私は…。

「そこまで弱るほど、人気がないのにショックを受けていたんですね!先生って、ナルシスト!?」

「人が素直に受け取ってやれば、てめぇはぁ!!」

「いだ、いだいですっ、鼻がとれるぅ!!」

弱らせて狩る、これが肉食女子の醍醐味ですな。

けど、ちょっと痛い…、近づきすぎると反撃にあう…、覚えておきます!!




薄桜鬼 二次 土方歳三

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