拍手の数だけ 3

そぉっと、そぉっと

後ろから足音を立てないように近づいて、

目を両手で覆った。


「斎藤さん!だぁれだ!」


嬉しく弾んだ自分の声で、すぐにでもばれてしまうと思うけれど。

でも、きっと斎藤さんは、もっと前から気づいている。

だって、刀の手入れをしていた斎藤さんが

私が近づき始めたら、鞘に収めて自分の前に置いたから。


「どうした、急ぎの用事か?」


目を覆っている手を外しながら、素っ気無く答える斎藤さん。

残念なんですけど・・・。

どうして驚いたりしてくれないし、分かっているなら「あんただろう?」とか、言ってくれないのかな・・・。

ついでに言うと、名前で呼んで欲しいのに、なかなか呼んでくれない。


「別に、用事は無いです。」


外された手を首に回して、後ろからギュッと抱きつくと、

一瞬だけ、

斎藤さんの身体が固まった。


「斎藤さん、こうされるの、嫌いですか?」


「何故、そんなことを聞く?」


「だって、いつも、固まるから・・・。」


斎藤さんの耳元で、

そっと拗ねた様に囁く。

と、斎藤さんが急に振り返ってじっとりと見つめてきた。


「・・・・・・あの、怒ってるんですか?

そんなに嫌でしたか?」


鋭い視線で射抜かれて、

背筋に冷や汗が流れる。

そんなに、嫌がっていたとは知らなかった・・・。

いつも受け入れてくれていたから、分からなかった。


「あの・・・・・・

ご、ごめんなさい・・・。」


慌てて離れようとする私の腕を掴んで、

斎藤さんが私のほうに身体を向けなおして

首を傾げた。


「何故、謝る?」

「え・・・?だって、嫌だったんでしょう?」

「・・・・・・嫌ではない。」

「・・・・・・え?」

「嫌ではないと言ったのだ。嫌だったら、近づいてくる時点で用件を聞いている。」

「それじゃ・・・、嫌では無いんですね。

良かった。」


嫌ではないと言う斎藤さん。

それに安心して微笑むと、斎藤さんが掴んでいる腕を自分に引き寄せた。

そのせいで、私の身体は斎藤さんへと寄せられてしまい・・・


「嫌ではないが・・・、そうではない。

あんたにそうされるのは・・・・・・好きだ。」

「斎藤・・・さん・・・・・・。」


胸の中に引き寄せられて、顔が熱くなってくる。


「じゃあ、拍手の数だけ、後ろからだぁれだ?って、やりますね。」


真っ赤になっているな・・・。

分かってる。

分かってるけど、そんな顔を見られるのは恥ずかしいけれど、

斎藤さんを見上げて、ドキリとする。

すぐ目の前に斎藤さんの静寂に満ちた顔が迫っていて・・・

口付けを・・・、されて・・・。

お互いの顔が赤く染まっている。


「それよりも・・・・・・、

拍手の数だけ・・・。」


それ以上言わずに、再び口付けが降ってきた。

拍手の数だけ・・・。

長い口付けを終えて、そっと身体に抱きつくと、

斎藤さんが優しく抱きしめてくれた。





薄桜鬼    二次    斎藤さん

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